作家の高橋源一郎氏が執筆を担当している、朝日新聞オピニオン面の「論壇時評」は、毎回、胸にストンと落ちる好きなコーナです。「民主主義の行方 憲法改正の『アート』な世界」という魅惑的タイトルがふられた今回(12月20日付け朝刊)の一文も、その期待を裏切らないものでした。 「現実すれすれのところで、ありえないものを描き、そのことで、いま見ている現実がなんだか嘘臭く見えてくる」。そんな力をはらんでいるような「アート」に、「現実」であるべき政治がなってきており、その「いま最高の『アート』」の1つが、今年4月、自民党が7年ぶりに発表した憲法改正草案ではないか、と。 基本的人権が「目の敵にされている」ように「国民の責務」が銘打たれ、乱発されている「公益及び公の秩序」。「表現の自由」は「保障する」としながらも、「公益及び公の秩序」で縛りがかかる。起草者たちは「主権は国民にない」「天賦人権論をとるのは止めよ