秦郁彦氏が「南京事件」(中公新書)で提示した犠牲者数四万人説はよく知られています。特に軍オタ系自称リアリストを中心によく支持されている説*1と言えますが、その推定過程や根拠についてはあまり周知されているようには見受けられず、「四万人」という数字だけが一人歩きしているようです。 数々の証拠から南京事件の存在自体を完全否定するような“マボロシ”説は今や通用しません。南京事件犠牲者遺族を侮辱し名誉毀損で敗訴した東中野氏が“マボロシ”説の代表格ですが、日本の裁判所からすら「学術研究の名に値しない」と評されるレベルですから産経新聞や極右議員と言った資金力・政治力の背景が無ければとっくの昔に“マボロシ”説は消滅していたでしょう。完全否定説は資金力と政治力で延命措置が続けられていますが、瀕死の状態であることに変わりありません。 さて瀕死の完全否定説を採用することは躊躇われるものの、さりとて中国側主張の3