それは、朝の職場に向かう時のことだった。駅から学校までは15分ほどの道のりなのだが、最後の500mほどが直線になっている。それまでうつむき加減に歩いていたのだが、ふと顔を上げてみると40~50m先を自分らしき人物が歩いているのが見えた。後ろ姿しか見えないが、確かにあの格好は10年前の50歳の頃の自分だ。その頃のごいさんは、校長先生になりたいと思っていた。校長先生になって学校全体を盛り上げたいなんてことを考えていた。だが、その熱い思いは2~3年後にはすっかり冷めてしまうことになる。結局、校長先生の力も限りがあって何事も思うようにならないことが分かった。上からの命令をただ押し付けるだけの仕事は自分には合わないことは知っていたしね。それでも生徒や学校へ寄せるごいさんの思いは同僚や若い先生には伝わったようで、最後まで慕ってもらえて最高に幸せだったんだ。 よく見るとその先を40歳の自分が歩いているよ