11月に刊行された多根清史『ガンダムと日本人』(文春新書)。大東亜共栄圏や、高度経済成長、55年体制と小沢一郎など、日本の政治・戦争をテキストに、アニメ『機動戦士ガンダム』はなぜ生まれ、なぜ愛されるのかに迫る一冊だ。国際政治学の大家・高坂正堯に師事した政治史通にして、雑誌「オトナアニメ」(洋泉社)のスーパーバイザーを務める名うてのアニメライターは、ガンダムの向こうにどんな日本人像を見たのだろう。 ――そもそも、なぜ、ガンダム本を? 多根清史氏(以下、多根) 去年、1/1スケール等身大ガンダムが立ったことが一番大きな理由ですかねぇ。1/1ガンダムを作るとなれば、技術も予算も必要だし、「景観を壊す」って声があがることも考えられた。ところが、ちゃんとコンセンサスを得て「ガンダム、お台場に立つ」が実現できた上に、オタクだけでなく、多くの人がこぞって見に行っていた。そんなガンダムの姿が、新しい日本の