現在の不均衡状態を理解するには、DSGEなどの合理主義的なマクロ経済学は役に立たない。それはゲーム理論の言葉でいえば「一定の(非現実的な)条件のもとではナッシュ均衡が存在する」といっているだけで、不均衡状態が均衡に収束するのかどうかという問題には答えていないからだ。これを考えるには、進化ゲーム理論のほうが役に立つだろう。 本書は、学習ダイナミクスなどの高度な進化ゲーム理論を解説した、日本語で唯一の教科書である。内容は一般向けではないが、これまでWeibullの古い教科書しかなかったので、研究者には便利だろう。特に金融危機との関連で重要なのは、協調ゲームのような複数均衡状態で悪い均衡にはまり込んでいるとき、「よい均衡」に移行するにはどうすればいいかという戦略だ。 RBCの想定するようなself-confirming equilibriumがどういう条件で成立するかという問題を扱った本とし