きっかけはニューヨークで出会った、ある人物の“笑顔”だった。 その日、学生だった佐野陽光は、NGO団体の一員として国連の会議に参加していた。 並み居る世界各国の出席者たちのなかで、ひときわ輝いて見えたその人物は、モノが溢れる豊かさとはほど遠い、カリブ海の小さな島国の出身だった。 それまで、世の中を変えたいという一心で電気自動車やエネルギーを研究するなど、さまざまな取り組みを行なってきた佐野だったが、「彼は心から納得して、ハチミツを作ったりしていた。利便性の先に、彼のような笑顔はないと思ったんです」。 帰国後、自分はいったい何がしたいのか、あらためて考え続けた。「もっといい社会をつくろうと豊かさを追い求めてきたのに、なぜ日本には彼のような笑顔がないのだろう」。佐野は、日本でも彼のようなスカっとした笑顔を増やしたいと思った。 今、36歳の佐野は、料理サイトを運営するクックパッドの社長だ。同社の