困窮するひとり親世帯の家計には、激しい収入の波がある。波を大きくしているのは、公的手当のまとめ支給。それにうまく対応できないと、現金不足から滞納や借金を重ねるうち、何かのきっかけですぐ破綻(はたん)する。 関東地方の公営住宅の自宅で昨年9月、中2の一人娘を殺害したとして、母親が殺人罪などに問われた。家賃を約2年分滞納した末、明け渡しの強制執行当日に犯行に及んだとされる。11月27日、東京高裁は母親の控訴を棄却、懲役7年を言い渡した。 公判や行政の資料などをもとに、朝日新聞は、ひとり親だった母親の2年間の月収の推移と家賃の支払い状況を分析した。収入の波の中で、手当の入る偶数月に滞納家賃をまとめて払っていた様子が、浮かび上がった。 母親は学校給食センターのパート調理員だった。夏休みは仕事がないため、9月の収入は元夫からの養育費(3万円)のみ。一方、児童扶養手当が入る4、8、12月の収入は、30
困窮するひとり親世帯への公的手当は、数カ月分がまとめて支給されるため、家計に激しい収入の波をもたらす。その支給方法によって、貧困から抜け出せなくなる家族の姿を追った。 大阪府の30代女性は11日、中学生の長男と外へ出かけ、串揚げを食べた。 この日は待ちに待った、児童扶養手当の支給日だ。約17万円が振り込まれた。前日まで所持金数百円。1週間近く、ほぼ豆腐と米飯の食事でしのいできた。 昨年末、体の不調で失業。今は月5万円の養育費と、2、6、10月に入る児童手当(4万円)と、4、8、12月に入るひとり親世帯が対象の児童扶養手当で暮らす。手当の入る偶数月と入らない奇数月で、収入は激しく波打つ。 電気、水道、ガス、ネット、NHK、携帯、学校給食費や教材費。滞納していた公共料金を一気に支払うのも、手当の支給日だ。これで手当の半分が消える。 手当で一息つくものの、長くは続かない。どの料金を滞納するか払う
働き手を酷使する「ブラック企業」の求人は門前払いに――。厚生労働省は25日、法令違反を繰り返す企業からの求人をハローワークで受け付けなかったり、正しい就業情報を企業に提供させたりして、若者の採用後のトラブルを防ぐ新制度の詳細を決めた。来年3月から運用が始まる。 新制度は、10月から順次施行されている青少年雇用促進法に基づく。ハローワークでの求人は原則、企業が出したものはすべて受け付けなければならなかった。だが新制度では「ブラック」な企業の求人は受理しないようになる。違法な長時間労働や残業代を払わないといった違反を1年間に2回以上、労働基準監督署から是正指導されるなどした企業が対象となる。 企業が新卒者を募集する場合には、「過去3年間の採用者数と離職者数」「残業時間」「有給休暇の実績」といった情報を提供するよう法律で努力義務を課し、新卒者やハローワークなどから要求があった場合は情報提供を義務
ドメスティックバイオレンス(DV)被害者の一時保護施設(民間シェルター)などを運営する奈良市のNPO法人で、理事長が入所者の預金通帳を担保に現金500万円を借りたり、100万円超の預かり金を無断流用したりした疑いがあることが26日、法人関係者らへの取材で分かった。DV被害者を同法人に斡旋してきた奈良県もこうした情報を把握しており、事業実態の調査に乗り出した。 NPO法人は「地域密着型相談センターとまり木」(奈良市高畑町)。3500万円超の負債が判明し、奈良地裁が11月に破産手続きの開始を決定した。これまでDV被害者へのシェルターの提供のほか、障害のある子供らの自立支援施設も運営。収支報告書によると、平成26年度は約320万円の公的助成も受けていた。 法人関係者らによると、理事長は22年秋ごろ、支援者に「活動資金を貸してほしい」と依頼。当時とまり木に入所していたDV被害者の女性から預金通帳と
婦人相談所に一時保護された後、フィリピンに帰国し、故郷のまちを歩く女性。保護されていた間も苦しい思い出しかない=藤本伸樹・アジア・太平洋人権情報センター研究員提供 人身取引や家庭内暴力(ドメスティックバイオレンス=DV)の被害者を保護する全国の婦人相談所が、2010〜14年度に少なくとも46カ国1910人(年平均約380人)の外国人女性を一時保護したことが毎日新聞の調査で分かった。日本人を含む保護者は年4300〜4600人(10〜13年度、厚生労働省調べ)で推移しており、外国人の割合が際立つ。支援が限られて保護が長引く傾向も浮かぶ。【林田七恵】 この記事は有料記事です。 残り1577文字(全文1771文字)
岡山県の県立高校の男子生徒(当時16歳)が3年前に自殺した事件で、岡山弁護士会は12月25日、生徒が所属する野球部の監督だった教員の指導について、「生徒に対する教育的配慮を欠く行きすぎた叱責が人権侵害にあたる」として、再発防止のための措置を求める要望書を、高校と県教育委員会に提出した。 2012年7月に自殺したのは、県立岡山操山高校の野球部に所属していた2年生の男子生徒。今回の岡山弁護士会の要望書は、男子生徒の両親による「人権救済」の申し立てを受け、同会が調査した結果に基づくもの。両親は同日、岡山市内で記者会見を開き、「私たちの思いを受け止めていただき、感謝している」と喜びを口にした。(文・写真/秋山千佳) ●「息子が亡くなってからの3年半で一番いい出来事」 要望書は、監督が野球部員に対して、日常的に「殺すぞ」などと暴力的な発言をしたり、パイプ椅子を振りかざしたりしたほか、自殺した生徒に叱
うつ病などの精神疾患で休職した公立学校の教員が2007年度以降、毎年全国で5000人前後と高水準で推移していることなどから、文部科学省は来年度から学校の労働環境の改善に本格的に乗り出す。その一環として、福祉や心理などさまざまな分野の専門家と連携して問題に対処する「チーム学校」構想を推進するため専門家の配置を拡充する。 文科省によると、精神疾患で休職した教員は1990年代以降増え続け、08年度に5000人を超えた。25日に同省が公表した14年度の調査では5045人に上る。在職者に占める割合を学校別でみると、中学が0.65%(1548人)で最も高く、特別支援学校は0.64%(535人)、小学校0.56%(2283人)、高校0.36%(675人)だった。全体の39%が14年度中に復職し引き続き休職が44%、退職が1…
旧陸軍病院の桜は巨木に成長していた。藤田三四郎さんは水晶体の手術を受けており、屋外ではサングラスが欠かせない=宇都宮市内で <1面からつづく> ◆元ハンセン病患者、三四郎さんの戦後70年 生家の前、身を潜め 藤田三四郎さん(89)との出会いは33年前、群馬県庁記者クラブで行われた「栗生楽泉園(くりうらくせんえん)患者50年史 風雪の紋」発刊の記者発表の席だった。患者自治会長の三四郎さんが56歳、前橋支局員の私が27歳の秋である。 治療薬が普及してハンセン病が完治することは承知していたが、人権侵害を指摘されてきた隔離政策を柱に据えた「らい予防法」(1953年制定)が廃止される14年前のことだった。会見を終えて楽泉園の人々が立ち去ると、年長の記者が「消毒しろ」と事務員を促した。私は反論もせずに口をつぐんだ。 この記事は有料記事です。 残り4954文字(全文5248文字)
小春日和の師走7日。水戸市近郊の湖沼を望む高台で、藤田三四郎さん(89)は両親と兄妹が眠る墓に手を合わせた。ハンセン病と診断されたのは戦闘機の整備兵だった1945年春。罹患(りかん)を理由に除隊させられ、「非国民」呼ばわりされて強制収容された。以来70年間を群馬県草津町の国立療養所「栗生楽泉園(くりうらくせんえん)」で暮らす。偏見の目から親族を守るため、今も本名を伏せて「藤田三四郎」で生きている。 治安維持法制定の翌26年2月、半農半漁の10人兄妹の次男に生まれた。「勉強が嫌いで通信簿は乙ばかり。春は白魚捕り、夏は柿の木に組んだやぐらで夕涼みをした。筑波山麓(さんろく)に沈む秋の夕日は素晴らしく、冬は氷を割ってコイを手づかみした」。往時をしのび、思い出話は尽きなかった。 この記事は有料記事です。 残り516文字(全文856文字)
新しい官民連携型の社会投資モデル「ソーシャル・インパクト・ボンド」(SIB)を活用して社会養護が必要な子供たちの特別養子縁組を推進する。日本財団と神奈川県横須賀市の間でこんなパイロット事業がまとまり4月15日、東京都内で調印式が行われた。 SIBは財政難の中で国や自治体の負担を軽減しながら社会課題の解決を目指す新しい手法で、民間投資を活用して事業を実施し、一定の成果が挙がれば行政が投資家に利子をつけて事業費を償還する。今回は、日本財団が資金を提供してSIBの今後の可能性を検証するのが狙いで、国内では初の試み。今後、兵庫県尼崎市などでも若者の就労支援などを狙いとしたパイロット事業が予定されている。
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