引き続き、『学府と学風』に関して記す。 前回は書き込みばかりで少しも内容に触れられなかった。 今回はここを補ってみたい。 本書の中で小泉は、よく日清戦争の当時に於いて福澤諭吉が如何な態度を示したかを引き合いに出す。現在進行形で支那を相手に戦火を交えている都合上、それは自然な流れであろう。 ――この難局に、慶應義塾の門下生はどんな姿勢で臨めばよいのか? 迷った際は源流(みなもと)に還れ。創始者の中に方針を見出そうとしたわけだ。 そうなると真っ先に目にとまるのが、『日本臣民の覚悟』である。 (Wikipediaより、小泉信三) 日清戦争開戦直後、福澤諭吉は時事新報の紙面を通して今次戦争の意義を明らかにし、同時に「日本人が覚悟すべき三つのこと」を世上に説いた。すなわち、 第一、官民共に政治上の恩讐を忘るゝ事 第二、日本臣民は事の終局に至るまで慎んで政府の政略を非難すべからざる事 第三、人民相互に