「家のことを子どもが手伝うみたいな言い方をするようになったのって、いつ頃ですかね」。古い友だちにコーヒーをご馳走になりながら話していたときのことだ。田舎で百姓をやりながら大工としてそこそこに名前も売れてきたその友人とは、知り合ってもう四半世紀にもなる。いつの間にか遠くはなれてしまったが、人が大地に近いところで暮らしていくことの重要性については、それほど遠くない意識を共有できていると私は勝手に思っている。彼が淹れてくれるコーヒーはうまい。コロナだからと遠慮して、青空の下で飲む。稲刈りも済んで、すっかり秋の風景だ。 「えっと。そりゃ、子どもは家のことを昔から手伝ってきたんやろ。むしろ家の手伝いもしないで勉強みたいなのが最近のことで」 「そうじゃないんです」 私が理解できないのを見て取って、彼はゆっくりと説明をはじめた。もともと田舎の仕事というのは、暮らしの延長線上にある。暮らしとは生きていくこ