鈴木みのりさん(撮影:森栄喜) 大学中退、正規雇用に就いた経験なし、思春期の頃から自身の性に違和感を持ち、トランスジェンダーとして、女性として、葛藤と模索を続けてきたライターの鈴木みのり(38)さん。現在はジェンダーやセクシュアリティの考察を続ける一方、舞台俳優としても活動する鈴木さんが、これまで抱いてきた感情の揺らぎを見つめ直しながら、当事者としての考えを論考という形で明かした。 学校や家庭、職場、創作の現場など、あらゆる場所で差別を感じてきたこと、「LGBTQ」という言葉に違和感を抱くようになったことなど、自身の経験や思いを率直且つ丁寧に綴る。(「新潮」3月号掲載「わたしの声の複数」を加筆修正したものです) *** わたしは擬態する。スカートを穿く。下地を塗ったら、オレンジのコンシーラーで目の下の青い陰を補色して、その下にはイエローのコンシーラーで頬周りに透明感を出す。瞼にはアイシャド