もう10年ほども前だろうか。母が朝鮮史の資料を探しては調べていた時期があって、その時にどこかの本で見かけたらしい逸話を私に聞かせてくれたことがある。 閔妃暗殺のために日本軍が朝鮮王宮へ乗り込んできたとき、政府の高官たちは本を持ち出して部屋の入り口に置いて、日本軍の侵入を防ごうとしたという話。 本は大切なもの、尊ぶべきものだからまたいだり、ましてや足蹴にしたりしてはいけない。だから本を置いておけば入れない。 …当然、物の見事に蹴散らされてしまうわけだけれど。 この逸話の真偽についてはわからない。どこかの誰かの創作かもしれないし、本当にそういうことをした人が(一人以上)いたのかもしれない。ただ、その逸話を母が呆れながら話していたのだけは覚えている。どこか憎めないものを扱うような素振りもありつつ、それでも困ったものを語る色合いで「ばかだねぇ」とこぼしていたのだった。 ひとまず、閔妃暗殺という事件