鈴木敏夫流仕事術「必要なのは記憶力と整理整頓」 鈴木:石井との出会いは、20歳のころだったよね。『千と千尋の神隠し』が始まる前、石井は入社早々、制作部になじめなくてクビ寸前で、僕の下につくことになった。僕のやりかたは、「やらせる」ではなく、仕事を一緒にやる、ということ。 僕も若かったし、それまで自分1人でやっていたことを、石井と2人で考えることから始めた。まず最初に、僕の部屋の資料の整理をやってもらったんだったよね。 石井:クビ寸前だった僕がジブリで鈴木さんにたたき込んでいただいたことは、仕事で大事なのは「記憶力と整理整頓」だ、ということでした。眼の前のことを正確に記憶して整理整頓することが、仕事の8割なんだ──と。 『思い出の修理工場』は、人々の傷ついた思い出を修理し、美しい思い出に変える工場が舞台なのですが、鈴木さんがモデルの「ズッキ」というキャラクターが、主人公の少女「ピピ」に、壊れ