「海がモノラルで鳴っているようなイメージがあった」――君島大空は、3rd EP『袖の汀』の全貌についてそう語る。 穏やかなメロディーが波のように揺れる“光暈(halo)”にはじまり、長らく音源化が待たれていた“向こう髪”、2020年に放送された番組『no art, no life』(NHK Eテレ)のテーマ音楽“星の降るひと”、そして、“きさらぎ”“白い花”という新鮮な音楽的表情を見せる新曲を挟み、最後を飾る“銃口”の、沈黙とノイズが、哀しみと明日が、濃密に混ざり合う海へ。漂う詩は海から海へと、はじまりからまた新たなはじまりへと、流れつく。 これまでの作品がそうであったように、君島は本作『袖の汀』においても、1枚の作品を通して流れる物語を描きながら、その瞬間の自分自身の命のかたちを、その命の動きを、音楽として表現してみせる。 前作『縫層』以降の心境の変化と、その象徴たる1曲“光暈(halo