インテリジェンス小説とは、手嶋龍一氏のベストセラー『ウルトラ・ダラー』以降、切り拓かれたジャンルとされる。そもそも他国と陸で接することのない日本では、諜報活動が重要視されてこなかった。世界の混迷が深まった現代、インテリジェンスが見直され、それを題材とする作品も少しずつ現れている。 映像業界出身の作家・榎本憲男氏は、警察小説を志向しつつも、諜報・情報工作を果敢に物語に取り入れる作風で知られる。新刊を上梓したばかりの両氏が「インテリジェンスとは何か」を語り尽くした。 インフォメーションの「質」、それが最大の問題だ 手嶋 榎本さんは、コロナ禍の日々に起きた事象をDASPAシリーズの最新作『コールドウォー』で次々に活字化して、ほとんど同時進行のような形で扱っておられますね。あらゆる情報が氾濫するなか、どのように取捨選択し整理されましたか。 榎本 コロナ禍の情報は難しいですね。ウイルス感染症に関する