物語にとって、「場所」は極めて重要な意味を持つ。 それは、「たんなる舞台の下準備以上の存在」であるべきで、「登場人物にとって意味がある場所であり、感情が呼び起こされる場所であり、葛藤や個人的な悲劇や成長の機会を与えてくれる」ようなところでなくてはならない(『場面設定類語辞典』アンジェラ・アッカーマン、ベッカ・パグリッジ著、フィルムアート社、P12)。 近年の日本映画の2大ヒットメイカー、細田守監督と新海誠監督は、両名とも現代日本を舞台にすることが多い。両者はともにオリジナル企画をヒットに導く力があるわけだが、どちらも現代の日本、とりわけ都市と田舎を頻繁に取り上げている。 なぜ2人は、現代日本の都市と田舎を舞台に選ぶのか。その舞台設定は何を描くために必要としているのだろうか。 オリジナル作品と世界観 近年、「世界観」という言葉がよく使われる。この言葉は、「世界とはこういうものだ」という世の中