4月に刊行を開始する「地中海世界の歴史」(全8巻)への期待が高まっている。このシリーズは、講談社選書メチエの創刊30周年を記念する特別企画で、メソポタミア・エジプトの文明の誕生から、ローマ帝国の崩壊まで、4000年の文明史を一人の歴史家の視点で描く意欲作だ。著者の本村凌二氏(東京大学名誉教授)はこの著作を「20年ほど前から構想してきた」という。 歴史の新しい見方、「地中海文明」――「地中海世界」とは、つまり、どういったエリアことなのですか? 本村 地中海世界といっても、たんに地中海に面した沿岸地域のことだけを言っているわけではありません。メソポタミアやエジプトに起こったオリエント文明から、ペルシア帝国、古代ギリシアを経て、ローマ帝国の成立と崩壊にいたる歴史の舞台を「地中海世界」と呼んでいます。 ですから、地中海を取り囲んで、東はペルシアの勢力がおよんだ現在のイランやアフガニスタン、北はロー