松浦寿輝『明治の表象空間』が岩波現代文庫で上中下三巻本として収録されたので、この機会に再読してみた。この本は初版が2014年に新潮社から出ているが、当時私はこの本のタイトルに付せられた「明治」という時代区分に引っかかって、あまりきちんと読めなかった。前半疑似フーコー的(?) 表象分析(というわりには唐突な取ってつけたような国家権力への大文字的な批判が随所に入ってきてむしろ反フーコー的)が続いたと思ったら、後半は透谷・一葉・露伴の話になって、それ以後の近代文学を全否定する。その構えは勇ましいが、私にはそれが日本文学の本質的な問題を回避しているように見えた。今回読み直してみて、細部でいろいろ面白いことを書いているのが分かって少し見直したが、同時に私の違和感の根本的なところが見えた気がしたので、その点について書き留めておく。 すなわち松浦はこの本の最初の方で、明治維新は「横」(「横議」「横行」「