男鹿線 かたん かたん と走る 列車の中に どこからか 晩秋の北国の 冷たい風 と、通路をはさんだ 向かいの座席に ぽつんと一人 制服の少女 きっと さっきまで にぎやかに おしゃべりをしていた その 一人 本を読む 一人旅の僕に その声は 遠く 聞こえていた 友達はみんな 途中でおりて 一人の少女は ゆっくりと 縮んでいるようにみえた でも それが 彼女が 自分と 向き合った時の ほんとのおおきさ 少し開けた窓から なにかを探している 吹き込む風に 少女の髪が 揺れる と どこからか とんぼが飛んできて ふっ と 彼女にとまった 彼女は とんぼを 見つめると そっと手のひらで包み 窓から 逃がした ふいに 僕の中の 冷たい/銀色の 液体が きぃん と 揺れた ああ 君は そのままで その やさしさを いつまでも 僕は 旅を続ける つづける から ***** 秋田県内を一人旅したことがある