誰かの「やめた」ことに焦点を当てるシリーズ企画「わたしがやめたこと」。今回は作家・文筆家の星野文月さんにご寄稿いただきました。 子どもの頃からずっと「人に甘える」ことを後ろめたく感じ、うまく人に頼ることができなかったという星野さん。しかし2024年の夏に骨折したことをきっかけに、他人との関わり方に対する価値観が大きく変化したそうです。 *** 自分の中にある「甘えてはいけない」という呪縛 あるとき、一緒に歩いていた友だちが「ねえ、実は甘えるの下手だよね」と何気なく言った。わたしは平気な顔を装いながら、自分の心臓が小さく跳ね上がったのを感じた。 人前では「そこそこ甘えられる自分」を見せているつもりだったのに、自分の本性が見透かされた焦りのようなものを感じた。小さな棘が刺さったような気持ちで、しばらくその言葉を反すうしていた。 わたしは昔から、人に甘えることが苦手だった。 自分の弱さやできない