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創作小説の検索結果1 - 24 件 / 24件

  • キャラ改悪二次創作小説がバズっていて原作を見れなくなった話|ぽこぽ|note

    どうしても悲しかったので今から全てを吐き出します。ただのお気持ちnoteです。 ですがもしも同じようなことで辛い思いをしている方がいれば、このnoteが少しでも心の支えになってくれれば嬉しいですし、逆に私のこのnoteに共感できないという意見もあればそれも言ってくれて大丈夫です。 色んな意見を受け入れる覚悟でこのnoteを書きます。 私はこの前まで、とあるジャンルのとあるCPにハマっていました。(このnoteの中では攻めをAくん、受けをBくんと表記します) Aくんは公式でBくんに対してはツンツンしてしまう部分がありますが、基本的に人に対してとても優しく正義感も強いキャラクターで、Bくんにもそのような部分を「リスペクトしている」と言われていました。 Bくんはパッと見ヘラヘラしていてアホっぽく見えるし、Aくんにもそんな感じでグイグイいくのですが、実はとても頭が良いキャラクターです。 私はAくん

      キャラ改悪二次創作小説がバズっていて原作を見れなくなった話|ぽこぽ|note
    • 『三体』の二次創作小説でデビューした宝樹による、時間SF短篇集──『時間の王』 - 基本読書

      時間の王 作者:宝樹早川書房Amazon次々と表現規制が行われており、今後中国の小説や漫画やゲームはいったいどうなってしまうのだろうかと戦々恐々と見守っている昨今だが、そんな最中でも中国SFは本邦で多数邦訳・刊行されている。劉慈欣の『三体』の二次創作小説をネットにアップしそれが大きく話題となって、そのまま劉慈欣公認で出版社から刊行されたことでデビューした宝樹による、時間SF短篇を集めた『時間の王』もそんな中の一冊である。 宝樹の短篇は、ケン・リュウによって編集された現代中国SFアンソロジー『月の光』や、中国史をテーマにしたSFを集めた日本オリジナルのアンソロジー『移動迷宮』などにすでに収録されていて、作家としての力量と作品のおもしろさは充分にわかっていたから本作にも期待していたのだけれど、予想にたがわずおもしろかった。 時間SFテーマなのでメインのギミックはタイムトラベルになるが、歴史テー

        『三体』の二次創作小説でデビューした宝樹による、時間SF短篇集──『時間の王』 - 基本読書
      • 有隣堂がマスコットキャラ「ブッコロー」の二次創作小説を公式で募集したら300作品以上も集まってしまった

        創業113年の老舗書店、有隣堂が様々な世界をお伝えするYoutubeチャンネル「有隣堂しか知らない世界 」。 今回は「ブッコローの二次創作コンテスト結果発表」の感想ツイートをまとめました。

          有隣堂がマスコットキャラ「ブッコロー」の二次創作小説を公式で募集したら300作品以上も集まってしまった
        • しあわせ王国とふしあわせ王国 (創作小説)       幸せの定員 ***0***  - 森の奥へ

          しあわせ王国とふしあわせ王国 遠いむかし、ある星にしあわせ王国がありました。 しあわせ王国はしあわせ王がおさめる国でした。王国が生まれてから数千年、その国の人たちはみんなしあわせでした。王様はもちろん、王様につかえるだいじんも、だいじんの家族たちも、町の人も村の人も、人々がかっているイヌやネコやフーゴたちも、みんなしあわせでした。その国にはしあわせしかありませんでした。 しあわせ王国の北に、ふしあわせ王国がありました。 ふしあわせ王国はふしあわせ王がおさめる国でした。王国が生まれてから数千年、その国の人たちはみんなふしあわせでした。王様はもちろん、王様につかえるだいじんも、だいじんの家族たちも、町の人も村の人も、人々がかっているタヌキやキツネやシイヴたちも、みんなふしあわせでした。その国にはふしあわせしかありませんでした。 ラテテウという少年がいました。ラテテウのお父さんはしあわせ王につか

            しあわせ王国とふしあわせ王国 (創作小説)       幸せの定員 ***0***  - 森の奥へ
          • 幸せの定員 (創作小説)  ***+7*** これまでの掲載分もまとめています。本年もどうぞよろしくお願いします(^_^) - 森の奥へ

            あけましておめでとうございます。 コロナ禍でのお正月、どうお過ごしでしょうか。 年末の寒波到来で、神戸にも雪が積もりました。 新年の陽光がその雪を溶かしていくように、2021年が明るい年になりますように。 本年もどうぞよろしくお願いいたします。 2021年 元旦 山猫🐾 「幸せの定員」という創作小説を11月の終わりから、連載しています。 でも、ぼちぼち更新のために年を越えてしまいました。 連載はようやく後半に差しかかり、あと数回で終わります。 今日からラストまで毎日更新しますので、よろしくお願いします。 本作を初めて読んでくださる方、前に読んだけど内容を忘れてしまったという方は、初回からまとめて掲載していますので、このままスクロールして「***-3***」からお読みいただければと思います。 前回の続きを読んでくださる方は、クリックしていただけると「***+7***」に飛びますので、こちら

              幸せの定員 (創作小説)  ***+7*** これまでの掲載分もまとめています。本年もどうぞよろしくお願いします(^_^) - 森の奥へ
            • 幸せの定員 (創作小説)  ***はじめに*** - 森の奥へ

              長らくぶりの更新です。 ご無沙汰しています。 前回、記事を投稿したのが7月の初めでした。 猛暑の夏はとうに過ぎ、季節はすっかり秋です、、、 と、二か月ほど前に書き始めましたが、何度か書き直しているうちに、もう冬です。 お変わりなくお過ごしでしょうか。 わたしは変わらず元気で過ごしています。 仕事の必要に迫られて朝夕の検温を欠かせませんが、体温はずっと36度台を保っています。 マスク効果はすごい、と改めて思います。 今年になってからまだ一度も風邪をひいたことがありません。 時々頭痛を覚えるのは、呑み過ぎのせいでしかありません(^^; わたし山猫🐾はたまに小説を書きます。 本当は毎日でも書いていたいのですが、それができなくて、仕事をしたり、テレビを観たり、ブログをぼちぼち更新したりしてきました。 今回はいろいろと思うことがあって、どうしても新作を書いてブログを更新したかったのです。 なので、

                幸せの定員 (創作小説)  ***はじめに*** - 森の奥へ
              • 幸せの定員 (創作小説)  ***-0.5*** 貧乏な人とは、少ししか持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ - 森の奥へ

                幸せの定員(創作小説) ***-0.5*** 検査入院をする母に付き添ったときのことです。 検査入院ですから、どこか体調が悪いわけではなくて、検査後を安静に保つための入院です。 その夜一晩を病室で過ごせば翌朝には退院できます。 病室は4人部屋、母のベッドは部屋に入って右の奥。窓側のベッドでした。 南向きの5階の病室に差し込む陽射しは暑いくらい。 窓からは病院に隣接する高校のグランドが見渡せ、遠くに目をやると、立ち並ぶビルの谷間に海が見えました。 野球のユニフォームを着た男子生徒たちがグランドに現れ、キャッチボールを始めました。 部屋に目を戻し、隣のベッドとの間を仕切るカーテンを閉めると、その夜母が過ごす、およそ2畳ほどのスペースができあがりました。 そのうち、ベッドが1畳分の広さを占めていて、残り1畳のスペースにテレビ台を兼ねた収納棚が1台とパイプ椅子が1脚、食事用の可動式ベッドサイドテー

                  幸せの定員 (創作小説)  ***-0.5*** 貧乏な人とは、少ししか持っていない人ではなく、無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ - 森の奥へ
                • 幸せの定員 (創作小説)  ***+6.5*** お金と時間と幸せと - 森の奥へ

                  幸せの定員(創作小説) ***6.5*** スマホの「スクリーンタイム」という機能を使うと、毎日のスマホの使用アプリや使用時間が記録されます。その記録は毎週日曜午前9時に週間レポートとして届けられ、「画面を見ている時間は先週から〇%増えました」とか「……〇%減りました」と言うようにスマホの使用状況を厳しく指導してくれるのです(^^; レポートによると、わたしの1日の平均使用時間はだいたい2時間半前後のようです。1か月(30日)に換算すると75時間(3日と3時間)になります。 えっ、、、 計算して驚いています。これを年間で考えると912.5時間、38日以上にもなるじゃないですか! で、そんなに時間かけてスマホで何をしているかというと、SNSやブログ、メールのチェックが大半です。それからSmartNewsやPinterest、Quoraを読んでいる時間もけっこうあります(SmartNewsはニ

                    幸せの定員 (創作小説)  ***+6.5*** お金と時間と幸せと - 森の奥へ
                  • 幸せの定員 (創作小説)  ***+10*** - 森の奥へ

                    幸せの定員(創作小説) ***+10*** 山手南口駅をねぐらに決めている南口のコウチャンは、駅のプラットホームにあるゴミ箱の中を覗いている。読み捨てられた週刊誌を探しているのだ。一冊あたり二十円で売れるから、その日は千円ほど稼いだ計算になる。これだけあれば、上等の酒にありつける。その夜のコウチャンはご機嫌だった。毎日一杯のカップ酒を手に入れることさえできれば、それだけでコウチャンは幸せになれる。あとは何もいらない。 コウチャンは駅が好きだ。鉄道も好きだ。バックパックを背負って駅を乗り降りする若者を見るのも好きだった。どんな旅をするんだろう? コウチャンはあれこれ想像し、若かった頃の自分をそこに重ねてみる。一緒に旅をするならどんな話をしよう。それを想うだけで楽しい。だからたまにコウチャンはカップ酒だけ持って電車に乗り込む。何駅か行って、駅員に見つからないように折り返して、また戻ってくる。目

                      幸せの定員 (創作小説)  ***+10*** - 森の奥へ
                    • 幸せの定員 (創作小説)  ***-2.5*** 幸せって「ポンと生まれたシャボン玉」かも知れへんな - 森の奥へ

                      幸せの定員(創作小説) ***-2.5*** 幸せってなんだっけなんだっけ♪ 1986年CM キッコーマン ぽん酢しょうゆ 明石家さんま ぽん酢しょうゆのある家さ♪ ぽん酢しょうゆはキッコーマン♪ ぽん酢しょうゆはキッコーマンキッコーマン♪ と続きます。 30年以上前のCMです。 しあわせって何だっけ 歌:明石家さんま 作詞:関口 菊日出 作曲:高橋 千佳子 幸せってなんやろ?って考え始めて、頭の中に浮かんできたのはさんまさんの歌声でした。 幸せってなんだっけなんだっけ♪ その日以来、このフレーズが耳について離れません(^^; 正規バージョン(関口菊日出・作詞)でさんまさんが歌っている幸せは、「ポンと生まれたシャボン玉」だったり「白いドレスとハネムーン」だったり「当たるつもりの万馬券」だったり。 「無理はするなと言うあなた」や「麻布 青山 六本木」も幸せ。 そして、「にぎりしめてる子どもの

                        幸せの定員 (創作小説)  ***-2.5*** 幸せって「ポンと生まれたシャボン玉」かも知れへんな - 森の奥へ
                      • 幸せの定員 (創作小説)  ***+9.5***  - 森の奥へ

                        幸せの定員(創作小説) ***+9.5*** 創作小説『幸せの定員』は次回の「+10章」で終わります。連載形式にしたためかえって読みづらくなってしまったとしたら、ごめんなさい(^_^; 今回は小説がまだ終わってないのに「あとがき」を先に書く、みたいな感じの章です。小説と言っても、ブログの一記事として掲載しているので、形式にこだわらなくて別にいいかなと思って。 もし幸せになる人の数が決まっていたとしたら、その限られた幸せ枠を巡って激しい争奪戦が起きるに違いない。そんな発想から書き始めました。と言っても、今回の作品を最初に書いたのはかなり前のことです。取調室でやたらと煙草を吹かす描写が出てくるのは、喫煙についての風当たりが今よりもう少し緩やかだった頃に書いたからだと思います。十数年ほど前に小説同人誌に発表したものを引っ張り出してきて、今回少し書き直して掲載しています。 作中に出てきたいくつかの

                          幸せの定員 (創作小説)  ***+9.5***  - 森の奥へ
                        • 幸せの定員 (創作小説)  ***+9*** - 森の奥へ

                          幸せの定員(創作小説) ***+9*** 藤村は和幸の過去を虱潰しにあたったようだ。 「あなたが小学六年生だった時のことです。あなたが転校された小学校で、その一カ月前にも亡くなった人がいたはずです」 藤村はそこで意味ありげに言葉を切り、和幸の反応を確かめるように一呼吸置いて続きを話し始めた。 「ところで、その時のクラス担任の先生がタカッチャンでしたか。もちろんニックネームですが。その頃は子供たちや親たちからも、タカッチャンと呼ばれていたらしいですね」 和幸は何食わぬ表情で煙草の煙を吐いている。その表情をしっかり見据えながら、さらに藤村は続ける。 「覚えていらっしゃいますよね。本名は、松本孝雄さん……。半年前の事故で亡くなった松本孝雄さん……でしたよね」 これを聞いた和幸の表情の変化を一切見逃すまいと、藤村は食い入るように和幸を見つめている。恐らく和幸の心臓は張り裂けそうなくらい強く鼓動して

                            幸せの定員 (創作小説)  ***+9*** - 森の奥へ
                          • 幸せの定員 (創作小説)  ***+3*** - 森の奥へ

                            幸せの定員(創作小説) ***+3*** 「ついこの前、新しいクラスがスタートしたばかりだっていうのに、緊張感はもう全然感じられないの。これは決してみんなが打ち解けてきたっていう意味じゃないのよ。わたしが何を言っても、あの子たちはみんな目を伏せてしまうっていう雰囲気で。そのくせ勝手なおしゃべりだけは一人前。ちょっとみんな、先生の言うこと聞いてくれてる? って大声出してしまいそうになるわ」 夕食の間中、佳恵は普段より口数が少なく、和幸の話にも生返事を返すだけだったが、食後のコーヒータイムに和幸が誘うと、ようやく重い口を開いた。 「ほんと白けてる。女子の一番のリーダー格の生徒がちょっと陰険な子でね、たぶんその子の顔色をみんなうかがってるんだと思うの。それに、どうやらいじめも始まったみたいなんだよね……」 コーヒーに落としたミルクをかき混ぜながら佳恵は続ける。要領よく新しいグループになじめない子

                              幸せの定員 (創作小説)  ***+3*** - 森の奥へ
                            • 幸せの定員 (創作小説)  ***-1*** - 森の奥へ

                              幸せの定員(創作小説) ***-1*** バスは民家の軒先をかすめるようにして器用に狭い道を走り抜けていく。 農協下、役場前、中央通東口、中央通西口……。ほんの数百メートルおきにある停留所に、バスは生真面目に停まって走る。 停留所のベンチに老婆が座っている。気持ち良さげに目を閉じ、居眠りをしている。バスは軽くクラクションを鳴らして老婆を起こす。はっと目を覚ました老婆は運転手を拝むような仕草をしてバスに乗り込んできた。あいにく車内は満員だ。老婆が増えた分、降車扉のすぐ傍に立っていた、腹にたっぷりと贅肉を蓄えた初老の男が代わりにバスから押し出される。 通路に立っていた中年の女性が老婆に優しげな声をかける。二人の女性が話す声が和幸の耳に届いてくるが、訛りが強くて何を言っているのかよく分からない。ひそひそ話が席を譲ろうとしない自分を非難しているように聞こえてくる。耳に障ってたまらない。和幸は深く座

                                幸せの定員 (創作小説)  ***-1*** - 森の奥へ
                              • 幸せの定員 (創作小説)  ***-3*** - 森の奥へ

                                幸せの定員(創作小説) ***-3*** バスの揺れに合わせて乗客が揺れる。車窓に映る景色も同じように揺れる。上に下に、左に右に。大きく、小さく。 シャーシが軋む音と整備の悪い道の具合からすれば、そのバスはおそらくかなりのオンボロで、たいていは田舎道を走っているのだ。 乗客たちは皆、前を凝視している。遥か前方に淡い光が見える。バスはその光に向かってゆっくりとゆっくりと走っていく。 バスはいつも満員。それで足らずに、屋根にもドアの外にも何人も何十人もがしがみついて乗っている。もはやそれ以上は猫一匹だって乗れそうにない。それなのに、停留所にはおびただしい数の人たちが待っていて、バスが着くたびに、その大勢の人たちが先を争って乗り込もうとしてくる。 乗客たちは、いつ来るか分からないこのバスをずっとずっと前から待っていた。停留所があるんだからきっといつかやってくる。そう信じて待つしかなかった。なにし

                                  幸せの定員 (創作小説)  ***-3*** - 森の奥へ
                                • 幸せの定員 (創作小説)  ***+2*** - 森の奥へ

                                  幸せの定員(創作小説) ***+2*** 警察の懸命の捜査にも関わらず、犯人の手がかりが一つも得られないまま、一カ月が過ぎていた。 そして、事故の日以来、鬱々と沈み込んでいたそのクラスに転校してきたのが和幸だった。六年生は二クラスしかなく、一組に比べて人数が少なかったという理由だけで和幸は二組に自動的に割り振られたのだ。そのことは沙耶香が事故に遭う前からすでに決められていたことだったから、それは当然、沙耶香の空席を埋めることを意識したものではなかった。 先のタカッチャンの不用意な一言は、ひょっとすれば、沙耶香さえいてくれれば元の平和なクラスに戻れるのに、という思いが無意識に現れただけだといえるかも知れない。ただ、その言葉はあまりにも考えがなさすぎた。 お気に入りのクマのぬいぐるみをなくしてしょげている幼児に別の新しいウサギのぬいぐるみを与えて慰めようとしているようなものだった。タカッチャン

                                    幸せの定員 (創作小説)  ***+2*** - 森の奥へ
                                  • 幸せの定員 (創作小説)  ***+1*** - 森の奥へ

                                    幸せの定員(創作小説) ***+1*** M小学校は和幸が六年生の秋に転校した先の小学校だった。転校の理由は父親の瀬山幸司が長年の夢だったペンション経営を始めるためにM村に引っ越したからだった。 幸司は二十年間勤めた大手家電メーカーを辞め、県中央部の山間の地、M村でその夢を実行にうつすことにした。茅葺き屋根の旧家をペンションに改装し、食器や寝具類を用意し、車も送迎用のワゴンに買い換えた。近くに温泉が湧き、冬にはスキー客も数多く訪れる地方だった。 若い頃から幸司は暇さえあれば旅に出ていた。休みのたびに行き先も決めず、リュックを背負ってぶらりと一人で出かけていた。 社会人になってからはその機会も少なくなり、いつしか幸司の楽しみは、旅をすることからそれを語り合うことへと変わっていった。旅を語り合う最良の方法は、旅人をもてなす側になればいい。そうすればいつでも飛び切りの刺激に満ちた話を聞くことがで

                                      幸せの定員 (創作小説)  ***+1*** - 森の奥へ
                                    • 幸せの定員 (創作小説)  ***+6*** - 森の奥へ

                                      幸せの定員(創作小説) ***+6*** 「キャンプは来週だけど、その間くらい自分で食事作れるよね、和くん?」 話題が変わった。佳恵は心に溜まっていたものをすべて和幸に吐き出して、すっきりしたようだ。 「食事作るなんて全然大丈夫。心配しないでいいよ。僕の方こそ、その間キャンプ生活をエンジョイするんだから。今まで秘密にしてたけど、僕が作る直火焼きのキャンプ飯、最高に美味いんだよ」 「そうよね。レトルトのカレーでも外で食べると途端に美味しくなっちゃうものね」 「馬鹿にしたなーー。直火焼きの薪は斧で薪を割るところからちゃんと準備するんだから」 「帰ってきたらお家が丸焦げだった、なんていうことだけはないようにしてね」 言いながら、ころころと笑い声をあげている。佳恵の機嫌はすっかり直ってしまったようだ。佳恵の笑顔はいつだって和幸の心をじんわりと温めてくれた。 佳恵は鼻歌を歌いながら食事の後片付けにと

                                        幸せの定員 (創作小説)  ***+6*** - 森の奥へ
                                      • 幸せの定員 (創作小説)  ***+4*** - 森の奥へ

                                        幸せの定員(創作小説) ***+4*** 和幸と佳恵は大学の同期生だった。学部は違ったが、同じテニスのサークルに入会して知り合った。新入生歓迎コンパの席順を決めるくじ引きで二人は偶然隣り合わせになった。佳恵は要領よく鍋料理の世話をし、和幸や先輩たちにビールを注いで回った。にこにこ笑いながら先輩たちのきわどい質問をかわし、とびっきりの面白い話で場を沸かせた。まるで自分よりいくつも年上のようだと和幸は感じていた。佳恵のような明るい女性に出会ったのは初めてだった。こんな女性とずっと一緒に過ごすことができれば幸せだろうな、それが和幸の第一印象だった。ところが、一方の佳恵は和幸と初めて話した時のことをあまり覚えていない。和幸は自分から進んでみんなの会話に参加するのは苦手な方だった。おそらく名前を紹介しあうことくらいしか、二人の間で言葉は交わされなかったのではないだろうか。 一回生の夏季合宿で、運よく

                                          幸せの定員 (創作小説)  ***+4*** - 森の奥へ
                                        • 幸せの定員 (創作小説)  ***-2*** - 森の奥へ

                                          幸せの定員(創作小説) ***-2*** 「ねえねえ和くん」 食事の手を止め、妻の佳恵が声をかけてきた。佳恵は結婚して半年が過ぎた今でも、大学で知り合った頃の言い方のままで和幸を呼ぶ。 ダイニングにはテレビを置いていない。食事しながらテレビは観ない、二人の会話を大切にしよう、そう話し合った。 佳恵のおしゃべりに勝るものはない、と和幸は思っている。いつかテレビを観ながら食事するときが来るとすれば、それは二人の関係性が変わってきたことを表しているのだろう。 「小学校の遠足の時って、バスの中で何してた?」 佳恵は続けて訊いてきた。 「何してたって、、、バスの中の過ごし方に、寝る以外の選択肢がある?」 和幸はご飯を頬張ったばかり。それを一気に飲みこんで答えた。 「まあ、、、寝てたの? ずうっと? いつもみたいに大きな口を開けて? まさか、口元に涎……。なんていうことはなかったでしょうね。よくいるよ

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                                          • 幸せの定員 (創作小説)  ***+5*** - 森の奥へ

                                            幸せの定員(創作小説) ***+5*** ――あの時も本当に必死だった。 いじめから逃れようともがいていた小学六年生の和幸が今の自分とダブって見えた。担任の先生は頼りにならなかったし、腹を立てたり、泣いたりしてみたところで、誰も和幸の苦しみを理解してくれるはずはなかった。和幸は誰にも助けを求めず、自分の殻に閉じこもっていった。堅い殻を身にまとって、耳をふさぎ、目を覆った。すべてを無視することで、何も感じないと思い込むことで苦しさを忘れようとした。それでもいじめは止みはしなかったが、周りの奴らの相手になるよりはよほどましだった。和幸は教室では一言もしゃべらない子供になった。この世界から逃れるためにはどうすればいいのか、何が自分を救ってくれるのか、和幸は考え続けた。いじめに怯え、逃げ回るっていうことは奴らと同じ次元に立ってしまうことになる。奴らよりももっと高い次元に立つことができれば、いじめな

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                                            • 幸せの定員 (創作小説)  ***+8*** - 森の奥へ

                                              幸せの定員(創作小説) ***+8*** 通過電車のアナウンスがあり、ホームレス風の男が電車の方を見ると、プラットホームの端に男が立っているのに気づいた。 その時間に駅を利用する乗客は勤め帰りのサラリーマンが大半である中で、その男の格好は少し目立っていた。大きく膨らんだリュックを背負ったジャージ姿だったからだ。ジャージ姿の男はかなり酔っているようだった。ホームに近づく電車がレールを軋ませる音が次第に大きくなってくる。別の一人、そっちはサラリーマン風の男だったが、そいつがふらふらとジャージ姿の男に近づいていく。突然、サラリーマン風の男は大きくよろけて、ジャージ姿の男の背中にドンと突き当たる。ジャージ姿の男はホームから転落する。その直後、電車のブレーキ音が構内に響き渡る。ホームは大騒ぎに包まれる。サラリーマン風の男はその騒ぎに紛れ、知らぬ顔で改札への階段を上っていく。 「……ホームレスのおっさ

                                                幸せの定員 (創作小説)  ***+8*** - 森の奥へ
                                              • 思いを繋ぐ守るべき花 ~愈史郎TrueEnd【鬼滅の刃二次創作小説】 - こじんてきしゅかん

                                                はじめがき。 もともと長女に読んでもらうため 書くこと約1週間。 全約13000文字くらいですが手直しをしています。 順次更新していきますので、 興味がある方は読んでいただけると幸いです。 最終回前のジャンプ本誌の桜のシーン。 あそこからの妄想大爆発の最後へ。 本誌最終回とは全く違います。 気分を害する表現 そのキャラクター・時代にそぐわない表現 単行本勢なので大目に見ていただき、 気になるところは脳内で変換お願いします。 TV 鬼滅の刃 OP「紅蓮華」/LiSA 期間生産限定盤 鬼滅の刃(22) 缶バッジセット・小冊子付き同梱版 鬼滅の刃(23) フィギュア付き同梱版 もくじ プロローグ 十数年ぶりの涙 炭治郎のお願い 我が子のように思うからこそ もうひとつの手紙 無惨な現実は救えない 優しさの結末 エピローグ 鱗滝宅 禰豆子 蝶屋敷 愈史郎 思いを繋ぐ守るべき花 プロローグ 「・・・は

                                                  思いを繋ぐ守るべき花 ~愈史郎TrueEnd【鬼滅の刃二次創作小説】 - こじんてきしゅかん
                                                • ワンブックスさんで500ページ超の文庫同人誌を作ったメモ【二次創作小説同人誌】|化野/戯文舎

                                                  当初、カバーに箔押しがしたかったんですよね…(想定文字数が10万字くらいだったころ)。 なので箔の種類が多く淡クリームキンマリ 62kgを使えるスタブさんが第一候補かなと思っていました。 ・コミックモールさん 各種PPの割引があって「ライト書籍用紙クリーム 50kg(紙厚0.08mm)」が使える、カバーがきらびきに紙替えできる(検討時点の情報)等で候補に入れました。 ただコミモさん最薄の上記用紙は用紙の性質上インクのテカリがやや強く出るので、そこだけちょっと気にはなる。小説なのであまり気にする部分ではないんだけども。 ・RED TRAIN(ワンブックス)さん 基本料金に含まれるものがすごい。 本文・表紙・カバー・オビ。表紙・カバーのいずれかにクリア or マットPP標準装備。カラー・モノクロ同一料金なのでオールカラーもできる。 改めて書き出してみるとすごい。 長文になりがち民としては文庫専

                                                    ワンブックスさんで500ページ超の文庫同人誌を作ったメモ【二次創作小説同人誌】|化野/戯文舎
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