賃金・物価スパイラルは、インフレの悪夢だ。それは、以下のような事態を指す。何らかの原因、恐らくは突発的な出来事か政策の誤り、あるいはその両方により物価が上がり始める。するとその上昇ペースに追いつくために賃金が上昇し、それがまた物価を押し上げ、さらに賃金が上昇していくという悪循環が生じる。 現在、世界経済はその悪夢におびえていると言えるかもしれない。米国の時給は2022年に約6%上昇。40年ぶりの大幅な上昇率だった。英国の賃金(ボーナスを除く)は、年約7%のペースで上がっている。 米連邦準備理事会(FRB)は6月14日の会合で、それまで10会合連続で引き上げてきた金利を据え置く決定をした。FRBのジェローム・パウエル議長はその発表に際し、7月に利上げを再開するかを判断する一つの指標として、賃金の動向を注視していると述べた。 しかし、悪夢の中に現れる危険は、現実に心配すべき脅威とは似ても似つか