〈我々は、いまなお新型コロナのパンデミックのただ中にいます。(略)感染症は火事に似て、未感染者は可燃物のようなもの。火の粉が飛んで一気に燃え上がるように流行が再燃しかねません。(略)この点、最も参考になるのは100年前の「スペイン風邪」です。この感染症は3~4の波で日本を襲ってきました。 しかし、似たような感染症の大流行は、日本の歴史に他にはなかったのか。(略)かつて滝沢馬琴を読んで、記録の詳しさ、鋭さに驚いた記憶がありました。馬琴の「兎園小説余禄」を読み返すと、やはり記述がありました。 今から200年前の文政3年(1820)9月から11月まで「感冒」が大流行した、とあります〉 こう語るのは、歴史家の磯田道史氏だ。 広範囲で流行した「新型」感染症か 〈「一家十人なれば十人皆免るる者なし」というほど強い感染力でしたが、症状については、「軽症の場合は4、5日で回復し、大方は服薬もせず、重症の場