『萩原朔太郎大全』朔太郎大全実行委員会編(春陽堂書店)「日本近代詩の父」ともいわれる詩人、萩原朔太郎(1886~1942年)が没後80年を迎え、関連書籍が相次ぎ刊行されている。そんな中、出身地である前橋市をはじめ全国各地の文学館や美術館などは連携し「萩原朔太郎大全2022」と銘打った展覧会を開いている。 その展覧会図録を兼ねた『萩原朔太郎大全』(朔太郎大全実行委員会編、春陽堂書店・2640円)は全集未収録のエッセーや100枚超の写真を収める。作家で詩人の松浦寿輝ら20人以上の表現者や研究者がエッセーを寄せ、さまざまな角度から抒情(じょじょう)性豊かな朔太郎の詩の魅力を掘り下げている。 初心者にありがたいのは清家雪子の漫画「朔くんと朔太郎さん」。それによると、影一つにもおびえる神経質な子供だった朔太郎は学問も恋愛もままならなかった。心の支えになったのは音楽と文学。持ち前の鋭敏な感性は、大正6