「アジアのノーベル賞」と呼ばれるフィリピンのマグサイサイ賞を受賞している中村哲さん(61)は、1984年から、アフガニスタンとパキスタンの国境付近で、主にハンセン病患者の診療にあたってきた。 ▼やがて、医療活動だけでなく、農業支援や水源確保に乗り出す。2000年夏からの大干魃(かんばつ)を目の当たりにして、病気の蔓延(まんえん)を防ぐには、清潔な飲料水と十分な農業生産を確保することが先決だと悟ったからだ。「百の診療所よりも一本の用水路」が合言葉になった。 ▼中国には「水を飲むときには、井戸を掘った人を忘れない」という意味の言葉がある。日中国交回復の実現に力を尽くした人々をたたえる際に使われた。中村さんたちは、文字通りアフガンの人たちのために井戸を掘った。その数は1500本を超える。 ▼徹底的な現場主義を貫く中村さんにあこがれて、多くの若者が集まった。動機はさまざまだったが、口をそろえて「現