大正七年(1918年)に創業した「鶴巻温泉 元湯 陣屋」。人事担当者と、陣屋の社長に就任して間もない宮﨑富夫氏との間で、2009年にこんなやり取りがあった。 陣屋の人材募集に応じた人たちの中に、現役のSE(システムズエンジニア)が1人いた。履歴書を見るとSE一筋で、応募した時は個人事業主のSEだった。人事担当者は何かの間違いで応募してきたのではないかと考えたが、宮﨑社長に一応相談したのである。 通常なら有り得ないことが起きた 面接の際、次の会話を交わして、宮﨑社長はそのSEを雇った。 「これから自分たちで旅館業務の情報システムを開発しようと思っています。作ってみる気はありませんか」 「やってみたいです。よろしくお願いします」 通常なら有り得ない話である。SE一筋で来ていたにもかかわらず、温泉旅館のフロント係を志願した。応募は「たまたま」だったそうだ。 温泉旅館の社長は情報システムを自分で作