今般の東京都知事選挙に向けて、拙稿「都民のための東京都知事選の争点入門」での総論に引き続き、各論の最終回として、都と区の利害調整を取り上げたい。 日本の地方自治は、住民に身近な行政サービスである市町村事務と、広域的に便益が及ぶ行政サービスである府県事務から成る。この事務分担は、一般的に、都道府県が府県事務を担い、市町村が市町村事務を担うことになっている。 これに対し、東京都(都庁)は、多摩地域においては府県事務を担うが、特別区部では府県事務だけでなく一部の市町村事務も担う存在である。だから、特別区部にとっては、都知事選挙では、一部の身近な行政サービス(市町村事務)をどうするかも、問われるべき争点となる。 この背景として、東京都には、他の道府県と異なる都区制度がある。特別区は、市町村とほぼ同格の基礎自治体だが、税制上は市町村が課す税(市町村税)を、一部直接課さないこととなっている。それは、固