初体験のツアーファイナル、大会の開幕戦となる独特の雰囲気、そして幻想的な演出。それでも錦織圭のテニスが揺らぐことはなかった。 今季の成績上位8人だけが出場できる、ツアーファイナル。地元イギリスのアンディ・マリーとのラウンドロビン(予選リーグ)初戦、錦織圭はストレート勝ちを収めた。 その瞬間、錦織は小さく拳を握り観客の声援に片手を挙げて応えたが、勝者の反応はそれだけだった。 BIG4の一人で、世界ランク最高2位のマリー、しかも過去に3戦全敗と苦手とする相手をストレートで倒したという現実と、錦織のリアクションが釣り合わない。 ちょうど1年前、錦織は「だれを崩してみたいかと言われれば、マリーが一番」と話している。インテリジェンスと水も漏らさぬ守備を併せ持つこの相手には、錦織が繰り出す攻撃がなかなか有効打にならない。 「やっていると、ハマっちゃうんですよ、彼のプレーが」 錦織はそう苦笑した。だから