慶應義塾大学政策・メディア研究科特別招聘教授 ある国の政策を考えるときにもっとも大事なことは、その政策がNational Benefit(国民利益)を生み出せるかどうかである。特に通信業界のような事業免許制の規制産業においては、政府がどのような政策をとるかによって、国民利益が大きく影響を受ける。 通常、産業の創生期には規制を強くして、揺籃期の企業を保護し、産業が立ち上がると競争を促進することで産業を成長させるというのが資本主義社会での典型的な産業政策である。しかし日本の場合、特に2000年代の10年間は、移動通信業界への規制がどんどん強化されてきた。 この背景には、政策と関係なくいろいろなイノベーションが起こり、いわば勝手に産業が成長したところへ、官僚が規制を強化することにより影響力を行使しようとしてきた過程があると言える。政府が2Gや3Gなどというネットワークインフラを中心とした政策論を