(安田 峰俊:ルポライター) 1999年に開設された「2ちゃんねる(以下、2ch)」はかつて世界最大規模のネット掲示板として名を馳せたが、2010年代初頭からユーザーの高齢化や運営者の内紛などを理由に、ごく一部の板(コミュニティ)を除いて勢いを失った。2017年には「5ちゃんねる」に改名され、分派として開設された類似サイトもあまりパッとしない。 ただし往年、2chが日本のネットカルチャーを代表する存在だったのも確かだ。不謹慎ネタを好み「便所の落書き」と揶揄される劣悪なデマや誹謗中傷が渦巻いていたいっぽう、タテマエやきれいごとを嫌うカルチャーゆえに、大手メディアが報じない際どい情報や庶民の本音が大量に書き込まれていた。加えて当時は2chが情報の「最先端」だったことで、一部のインテリ層と思われる人々も活発に書き込みに参加していた。 度の過ぎた悪ふざけや暴露行為と、たまに見せる意外な頭の良さと反
韓国の12月は寒い。体調を崩す時期で、韓国の経済記者に会うと「あの人が危ない」という話が出る時期になった。 そんな中で2019年12月9日、かつて韓国を代表す財閥だった大宇(デウ)の創業者である金宇中(キム・ウジュン=1936年12月17日生まれ)氏が死去した。波乱万丈の人生だった。 韓国企業の成功のキーワードは「スピード」だ。 サムスンもLGも、現代も日本企業をはるかに上回るスピードで成長をした。しかし、大宇ほど猛スピードで成功と転落を駆け抜けた例もないかもしれない。 猛スピードで成功と破綻を駆け抜ける 金宇中氏が、韓国随一の名門高校だった京幾(キョンギ)高校から延世大学経済学科に進み会社員生活を経て「起業」したのは満30歳だった1967年。社名は、大宇実業だった。 資本金500万ウォン(現在のレートは1円=11ウォン)、従業員5人で事務所は10坪(約33.33平方メートル)だった。 衣
「有給休暇なし、病気・介護休暇なし、産前・産後休暇なし。休むのは自由だが、その分の給料は払いません」──。このような会社があったとして、読者は就職を検討されるだろうか。 日本では制度上、有給休暇のない職場はあり得ない。労働基準法39条により、勤続半年で10日、勤続6年半で20日の法定年次休暇の付与が義務付けられているからだ。 ヨーロッパにはフランス(30日)、イギリス(28日)をはじめ有給休暇の充実した国が多い。だがアメリカには有給休暇についての連邦法の規定がない。そのため「有給ゼロ」の会社が少なくない。そういう職場では前述のように、欠勤して旅行に行くことは認められても、休んだ分の給料はカットされる。 「過半数が有給休暇ゼロ」という階層 有給休暇を保証してくれない国はOECDのなかではアメリカだけである。だが、米政府が労働者を見捨てているととらえるのは早計だ。労働時間や最低賃金といった基本
平時であれば、エンジニアのマナルさんと弁護士の夫、イブラヒムさんのようなカップルは、イスタンブールからブダペストへ2時間で飛ぶ航空券を200ユーロ足らずで買うことができる。ところが、専門職の若いシリア人夫婦は、1カ月かかる徒歩と船の旅のために密航業者に3000ユーロ払うことを余儀なくされた。 城や美術館を見に行く途中でブダペスト東駅の外にひしめく観光客とは異なり、マナルさんの家族は、40度の暑さの中、駅の階段の下に敷かれたぼろぼろの毛布の上に茫然と横たわるおよそ2000人の移住者に混ざって座っていた。 マナルさんとイブラヒムさんが小さな子供2人を連れてこの危険な旅に出ることにしたのは、戦争のせいでも電力、水の不足のせいでもなければ、仕事を失ったからでさえなかった。子供たちは今、夜中に森を歩いたせいで、擦り傷だらけになっている。 シリア難民を象徴する若い家族の物語 「あのいわゆるイスラム国の
金正恩(キム・ジョンウン)はすでに中世の暴君のように北朝鮮を支配しているが、彼の直近の奇行は実際に時間を戻そうとするものだ。「卑劣な日本の帝国主義者」に対する勝利の70周年を記念し、平壌(ピョンヤン)の大物は、北朝鮮は日本が朝鮮半島を占領していた時代に押し付けたタイムゾーン(時間帯)を拒絶するために時計の針を30分間遅らせると宣言した。 エキセントリックかもしれないが、支配者たちが権力を誇示するためにタイムゾーンを変えてきた歴史がある。 そのような決断が本物の威信を制度化するのであれば、それは巧みに見えるが、威信の代わりになるのだとすれば、剣呑だったりばかげていたりする。 新技術によって誕生し、気まぐれで形作られてきた時間 タイムゾーンは新たな技術によって強いられたものだが、政治家の気まぐれによって形作られてきた。タイムゾーンが生まれたのは、太陽によって定められた農業の鼓動が工業の単調なリ
習近平政権は前政権が実行を先送りしたために積み残された様々な重要改革に取り組んでいる。昨夏までは改革の計画策定段階だったが、昨秋以降、徐々に改革実践のフェーズへと入ってきている。 すでに2つの重要改革にチャレンジしたが、その実践過程で市場から予想外の厳しい洗礼を受けた。政策実行の理念や方向は正しいが、実行段階に入ると思わぬ壁が待ち受けていたのである。 以下では、そのチャレンジの中味と教訓について考えてみたい。 1.地方財政の管理強化 昨秋以降、地方政府の財源調達に関する管理が強化された。昨(2014)年9月21日、「地方政府の債務管理の強化に関する国務院の意見」という行政命令が発表され、地方政府の税金以外の財源調達方法に対する管理が強化された。 これにより従来は地方政府が返済を保証していた金融機関からの借り入れについて、地方政府による保証が認められなくなり、金融機関自身が地方政府の個別プロ
6月10日、参議院本会議で「防衛省設置法」改正案が成立しました。この法案については極端な評価がマスメディアや国会で入り乱れました。曰く、「文官統制の廃止」「文民統制が損なわれる」「自衛隊員と防衛官僚の地位の平等化」等・・・。 (参考) 「『文官統制』を全廃 改正防衛省設置法が成立」(共同通信) 「背広・制服対等を明確化 防衛省設置法改正案成立」(産経ニュース) 「制服組、背広組と対等に 野党『文民統制、危うく』 改正防衛省設置法成立」(朝日新聞) しかし、本当の問題は、防衛省の意思決定における分権化がより進むことで、政策決定の混乱が起きかねないことなのです。決して、防衛官僚による自衛官の支配が終了するであるとか、自衛官が防衛官僚を支配するというような、短絡的かつ極端な問題ではないのです。 「12条」と「8条」の改正点とは 今回の法改正で、特に注目すべき第1の点は、これまでの防衛省内局(防衛
先日、中国人の旧友に北京で会った。友人は日本の大学に学び、その後15年ほど日本で働いていたが、現在は中国に戻って北京にある会社の取締役になった。順風満帆、あとは結婚するだけかと思ったが、中国ではエリートほど結婚には二の足を踏むというのだ。一体どういうことなのか。彼が語った当世、中国の結婚事情とは。 出世するほど結婚が怖くなる ――取締役就任おめでとう! 「ありがとう。中国に戻ってから2度目の職場だよ。最初は別の会社に勤めていた。その後、ヘッドハンテングされて今の会社に移ったんだが、社長に気に入られてこのポジションに抜擢されたのさ」 ――40代で取締役とは、スピード出世だね。 「中国の40代は人材不足。現在の大学進学率は日本以上になっているけど、20年ほど前は低かったから大卒が少なかった。それに、中国の教育は日本以上に暗記が中心。体制と矛盾するようなことを教えてはいけないから、批判精神が生れ
日本の海上保安庁の大型巡視船「しきしま」。中国がさらに大型の1万2000トン級巡視船を建造しているという(写真:海上保安庁) 人民日報が衝突戦法を誇示 人民日報が紹介したのは中国海警の新鋭1万2000トン級巡視船である。その巡視船自体の情報は以前から明らかになっていた。 これまで世界の沿岸警備隊が用いる巡視船(アメリカでは「カッター」と呼ばれる)のなかで最大の船体を誇っていたのは、日本の海上保安庁が運用している「しきしま型巡視船」(PLH-31しきしま、PLH-32あきつしま)であった。その満載排水量は9300トンであり、アメリカ沿岸警備隊が運用している巡視船のなかでも最大の「バーソロフ級カッター」の満載排水量が4500トンであるから、巡視船としては突出して巨大なものである。
トルコ南東部シュルナク県で銃を持つクルド労働者党(PKK)のメンバー(2014年12月28日撮影、資料写真)。(c)AFP/ILYAS AKENGIN〔AFPBB News〕 この1カ月ほどの間に、かつて中東地域の帝国であったトルコとイランの両国において大きな変化が現れたことは、帝国の逆襲と呼ぶことが最もふさわしいのではないでしょうか。 トルコは、シリア北部への空爆を開始し、かつてのオスマン帝国の領域にまで実力に訴えるという決意を露わにしました。そして、核問題合意という成果を得たイランは、かつてのサファヴィー朝の版図の一部であった地域への影響力を今後一層伸張させることは間違いありません。 中東の無秩序の只中では、トルコやイランといった古い国家が、主権国家からなる「ウェストファリア体制」の則を越え、かつての帝国的な行動を是とするようになったとしても、いささかも不思議はありません。 (注:17
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