中国上流層の「筋トレ」と「文トレ」 【安田】私が過去に取材した経験がある中華圏の偉い人は、香港の政治家と台湾の大金持ち、あとはアメリカに亡命中の山師的な大富豪である郭文貴くらいです。郭文貴の場合、取材前の雑談であえて古典や骨董の話をしてきて、こちらがどのくらい話題に乗れるかを見てきましたね。私は外国人枠という特例で、ギリギリ合格させてもらいましたが(『もっとさいはての中国』[小学館新書]参照)。 【渡邉】ビジネスで成功した中国人がまず何をするかというと、版本(はんぽん;木版で印刷された古書)や骨董品を買うんです。そういう部分で「文」の素養を示そうとする。いま、日本で宋版(宋代に刊行された書物)がオークションに出ると数億円の値がつきますが、たいていは中国のお金持ちが落札します。安田さんが会った郭文貴も、おそらくそういうタイプでしょう。 【安田】はい。郭文貴は叩き上げの政商で、三国時代なら州の