今年で第69回を迎える、アメリカで最も権威のある文学賞である全米図書賞が11月14日(現地時間)に発表され、多和田葉子さんの小説『献灯使』の英語版 ”The Emissary” が翻訳文学部門を受賞しました。1982年に『万葉集』と樋口一葉の作品集が受賞しているため、今回の受賞は、日本の文学作品として36年ぶりの受賞となります。とはいえ、日本人には馴染みの薄い全米図書賞。『献灯使』という小説の何が評価され、受賞につながったのか。英米文学の第一人者である三人に寄稿していただきました。 檻の中のライオン 多和田葉子さんについて書くときは、作品そのものに強烈な個性がありすぎて「すいません、とてもご本人まで手が回りませんでして」というふうになりやすい。付き添いのお母さんみたいに後回しにしてしまう。「おっと、著者もいたんですね。これは失礼しました」と。 私も今まではそうだった。 しかし、今回はおめで