銀座、新橋、築地の中間ぐらいのところに、ちょっと気になる建物があった。立方体の箱が積まれていて、丸い窓が並んでいる。その名は「中銀(なかぎん)カプセルタワービル」だ。 「あ~あの古いビルね。たしか数年前に取り壊したのでは?」と思われたかもしれないが、その通りである。近未来を感じさせられるデザインは建築家の黒川紀章(1934~2007年)さんが手掛けていて、産声をあげたのは1972年のことである。 建物は地上13階建てと11階建ての2棟からできていて、3階以上に140個のカプセルがあった。部屋の広さは4.5畳で、その中に造り付けの家具やユニットバスのほかに、テレビ、ラジオ、電話、時計、オープンリールデッキ(リールに巻きつけただけで、カセットに入れていない磁気テープ)などが備えられていた。ちょっと狭いワンルームマンションのような形だが、大きな違いはキッチンと丸い窓が開かないことである。 このよ