記者解説 編集委員・清川卓史 コロナ禍による生活危機が深刻化するなかで、「最終的には生活保護」という菅義偉首相の答弁が「炎上」した。社会保障の仕組みの説明としては間違っていない。なぜ、ここまで波紋が広がったのか。生活保護に関する二つの根深い問題が底流にあると私は考えている。 一つは、生存権を守る「最後の安全網」といいながら、厳しい資産要件など利用を妨げる制度上の壁があって、その名の通りには機能していないということだ。なかでも申請の最大のハードルと指摘されるのが「扶養照会」(福祉事務所が親族に援助の可否を問い合わせること)だ。 生活困窮者支援に取り組む「つくろい東京ファンド」は、年末年始の緊急相談会を訪れた人にアンケートを実施。生活保護の利用経験がない106人に「利用していない理由」を聞いたところ、最も多かったのは「家族に知られるのが嫌だから」(34・9%)だった。「子どもに迷惑をかけられな