ハンガリーの南部、カロチャ地方に伝わる「カロチャ刺繍」。色とりどりの刺繍糸で、バラやスミレなどの花々や、カロチャ名産のパプリカなどの農作物を描きます。伝統的には刺繍枠を使わず、図案の大部分をサテンステッチ※で仕上げるため、少し立体感が出るのが特徴。 今はカラフルな刺繍として有名ですが、当初は白一色で、女性がシンプルなカットワーク刺繍※で自分の持ち物にちょっとした飾りを施すことが多かったのだそう。19世紀中頃に民芸品としての価値を持ち始め、女性たちは自分のためではなく仕事として刺繍を行うようになります。その後染色技術が発展したことにより、様々な色を取り入れるようになり、また国が刺繍製品の輸出を奨励したことで大きく発展、文化として根付いていきました。 現在のカラフルな刺繍は、現地では主に礼拝やお祭りの時に着る民族衣装に施されています。若い未婚の女性は、赤やピンク、黄色などの華やかな色で刺繍され