2021年10月15日のブックマーク (2件)

  • 第1話  山神様は女の子 - おつかわし屋事調べ 山姫さま、奔る(しきもとえいき) - カクヨム

    ひしひしひしひしと、宵闇が背中を追っている。 蒼と木々が生い茂り、更なる昏い影を投げ掛ける奥深い山の道なき道であるのに、小間物屋の茂平は息せき切って、音をなるべく立てないように走っていた。 早鐘の如く鳴り響く自分の鼓動が外に漏れ聞こえるのではないかと怖れながら、止まることなく只管速足で峠を下っていく。 しとどに吹き出し滴る汗を拭いもせず、背中の行李の重さも気にする暇もない。 峠とは言え、街道から大きく外れている獣道である。 仕入れに少しばかり手間取ってしまい、出立が遅くなってしまった。 それを取り返そうと近道を進んでいたのだ。 そしてあれに出くわしてしまった。 見かけた途端に出来るだけ音を立てず、急いで逃げた。 自分が居た事は多分気付かれているだろうが、何処に居るか迄はまだ見極められていない筈だ。 茂平はそう自分に言い聞かせつつ、萎えそうになる体と心に喝を入れ乍ら、足を動かし続けた。 見

    第1話  山神様は女の子 - おつかわし屋事調べ 山姫さま、奔る(しきもとえいき) - カクヨム
    shikimotoeiki
    shikimotoeiki 2021/10/15
    お市は獣と話せる不思議を使い、今日も人と獣を助けるために直奔る! 痛快江戸ファンタジー
  • 第35話 山の不思議と絡む因果 - おつかわし屋事調べ 山姫さま、奔る(しきもとえいき) - カクヨム

    お市が薄っすらと意識を取り戻し、無理矢理に目を開けると、眼下に川の流れを見下ろしていた。 ゆらゆらと揺られながら、結構な速さでどこぞへと進んでいる。 「ぶるっ」 アオの声が聞こえる。 風が頬を打ち、馬のたてがみが鼻をくすぐる。 アオの背中で突っ伏しているようだ。 体はまだ満足に力が入らないし、呼吸も辛い。それでも肺臓は力強く息を吸う。 アオの足運びは、お市を落とすまいと慎重ではあるが、とても力強い。老骨の年寄馬とは到底思えない、力強さだ。 アオはいつも、お市のここぞという時には、必ず、お市の傍にあった。 お市が赤子の時から共に在り、お包み姿のお市を蝮から護り、幼き日、迷子になると迎えに行き、初次郎が彼岸に渡った時にも、片時も離れず傍にあったのは、アオであった。 お市のここが正念場という時に、その傍にいつも居る。 慰める訳でも無く、ただ側にいる。 それが、どれだけ心強く、どれだけありがたかっ

    第35話 山の不思議と絡む因果 - おつかわし屋事調べ 山姫さま、奔る(しきもとえいき) - カクヨム