神戸新聞の「傍流記者」・塩田武士は作家に転じ、8作目にして大ブレイクを果たす。あのグリコ森永事件をテーマに描いた『罪の声』である。 自身のキャリアを重ねたような新聞記者を主役に満を持して、デビュー以来の温めてきたテーマをぶつけ、ベストセラーに結びつけた。本屋大賞にもノミネートされ、筆力の評価も高い。 その塩田が『罪の声』から2年、書き下ろしを含む短編集『歪んだ波紋』を刊行した。テーマは「フェイクニュースと記者」だ。作家はこう問いかける。 「一体、何が報道の役割なのか。フェイクニュースとどう向き合ったらいいのか。一緒に考えようって声をかけたいんです」 読者だけではない。第一線に取材を続ける「記者」に、である。 記者は「誤報」にどう向き合うのか 『歪んだ波紋』はオムニバス形式の連作集だ。収録された5編は全国紙記者、地元紙記者、ネットメディアの編集長といったように主人公こそ違うが、同じ設定、同じ