山中 浩之 日経ビジネス副編集長 ビジネス誌、パソコン誌などを経て2012年3月から現職。仕事のモットーは「面白くって、ためになり、(ちょっと)くだらない」“オタク”記事を書くことと、記事のタイトルを捻ること。 この著者の記事を見る
私は工場(あるいは生産現場)に行くと、無性に感動する。取材の時だけでなく、講演会などに呼んでいただいた時も、可能な限り工場を見学させてもらうのだが、現場に足を踏み入れると決まって胸が熱くなるのだ。つい先日も、ある電力会社の発電所を取材させていただいたのだが、やはり同じだった。 恐らく工場で働く人たちの実直なまでの真面目さに、心が揺さぶられるのだと思う。 ひたすら頑固なまでに、彼らは決まった仕事を決まった時間に繰り返す。何事も起こらないように働くことが、彼らに課せられた最大の使命だ。だから、彼らは決められたことを、ミスのないように、徹底的に真面目にやる。彼らからは、「上司に評価してもらおう」とか、「いいところを見せよう」とか、「他人をおとしめてやろう」といった、卑しさや野心を微塵も感じることがない。 「日本という国は、こういう人たちに支えられているんだよなぁ」とつくづく感じるのだ。 多くの現
――この6月に発行された「モチベーション 3.0」(原題:“Drive”)を執筆したきっかけは? ピンク 前作である、「ハイコンセプト:新しいことを考え出す」(原題:“A Whole New Mind”)を書いたことだ。その本の中で私は「我々は左脳、つまりスプレッドシートを処理する能力から、芸術的な能力、共感する能力で注目されている右脳の時代に移行している」と書いた。すると読者は私にこうたずねてきた。「このようなことをするのにどのようにして人にやる気を起こさせたらいいのか」。この質問を受けて、「やる気」(drive)について調べてみようと思い立った。 動機付けについて膨大な研究が行われてきたことは知っていた。そこで論文を読み始めることにした。すると、驚くべき内容に当たった。 十分な報酬がないと、最低限の仕事しかしない ダニエル・ピンク 1964年生まれ。エール大学ロースクールで法学博士号を
2月上旬、NHKのラジオセンターに衝撃が走った。 「どうやら民放が、ネットでのサイマルに踏み切るらしい」「何だそれ、聞いてないぞ」――。 マスメディア産業の一角が、ついに生き残りをかけて、重い腰を上げた。NHK以外の民放局である。受信料で成り立つNHKと民放とでは、それだけ危機感に雲泥の開きがあるということだ。 AM、FM、短波の大手民放ラジオ局13社は、3月中旬から、地上波と同じ放送内容をインターネットでもサイマル(同時)送信することを決めた。日本音楽著作権協会(JASRAC)や日本レコード協会といった権利団体とも合意を得た。2月中にも正式発表する。 パソコンなどから「RADIKO(ラジコ)」のウェブサイトにアクセスすれば、無料で地上波と同じラジオ放送を聴けるようになる。ただし、アクセス元のIPアドレスから住所を類推する仕組みを用いて、当面は首都圏と大阪府の利用者に限定する。 大手放送局
気になる記事をスクラップできます。保存した記事は、マイページでスマホ、タブレットからでもご確認頂けます。※会員限定 無料会員登録 詳細 | ログイン 前回、国境の壁を何とも思わないパワフルな下着メーカーであるPants to Poverty(パンツ・トゥ・ポバティー)を取り上げたところ、販売サイトのアクセスが急伸したという、喜びの報告をスタッフの方から頂戴しました。 お買い上げいただいた方もいらっしゃったようです。私も愛用しており、この肌触りの良さは病みつきになります。 さて、私は「未来の仕事」を考える要素として、「国境はハードルならず」「ワラジは2足以上履け」という2つの視点がヒントになると思っています。今回は、「ワラジは2足以上履け」について話を進めていきます。 Cho君。この名を覚えていていますか? こちらも前回、取り上げました。私の経営するソウ・エクスペリエンスのスタッフがお世話に
友人が電話口でぷんぷんしている。 派遣会社の登録会に足を運んだそうだ。寿退社後、バツイチとなった彼女は数年ぶりの社会復帰と、リクルートスーツをバッチシ着込んで面接を受けたものの、様子がヘンなんだという。 個人情報に関するアンケートをいっぱい書かされた上に、「○○さん、専門スキルや資格を有していると有利なんですよ」と受講をすすめられる。 スキルアップのための講習は、やけに細かく、次々と受講しないといけないようになっていて、しかも一コマがバイトの給料の何日分にも相当する。担当者は斡旋に熱心で、仕事を欲するこちらの希望なんてまるで聞いてない。 「受講を断ったからか、求人の連絡もなしのつぶて。シビレを切らして問い合わせたら、担当から折り返し電話させますといったきり、もう一週間よ。どう思う?」 延々と彼女の話は続くのだが、その派遣会社は、どうやら資格商法へと稼ぎ方を切り替えつつあるらしい。 さて、め
このコラムについて アニメーションは、頭の中で望んだことを描き動かすもの。作り手の嗜好を忠実に映像化することができる。そして作り手は、視聴者の欲望をいかに捉えるかに常に腐心している。アニメにこそ、時代の欲望が見えるのではないか? そんな仮説を手に、日々アニメ制作に臨む監督たちにインタビューを申し込んでみた。 記事一覧 記事一覧 2010年5月7日 「一行」の明快な指示より「迷いなさいよ」がうれしい 「DARKER THAN BLACK -黒の契約者-」岡村天斎監督・3 “「どこが売りか」を一行で伝える”ことに誰もが熱心な中、面白さには「わかりにくいもの」が欠かせない、という岡村天斎監督。「DARKER THAN BLACK」シリーズでは、謎を散りばめて視聴者を「迷い... 2010年4月23日 「迷い道くねくね」がロングランへの“近道”かも 「DARKER THAN BLACK -黒の契約
文楽人形のおっとり顔が、仕掛けの棒を引くと、ギョッとするくらい目と口を一変させ、鬼に化身する。それにそっくりだなあと思わせる出来事があった。 駅のホームで、女子高生が、ケータイを手に、「なにしてやがるんだ! 来いッテ、言ってンだろ!」と罵っている。 ガルルルルと、吠えかかりそうな剣幕に、すーっと、彼女のまわりから人がいなくなっていたのだが、そういう場面に出くわすと、どうもワタシはつ、つ、つ、つっと、近寄ってしまうきらいがある。 制服のスカート丈は短くないし、髪も黒かった。ふだんはお嬢さんらしく振舞ってもいるのだろうが、その目は釣りあがっている、ように見えた。キレルというやつだ。 もはやギャル語なんて使ってはいない。彼氏が別の女の子にちょっかいをだしたのを知ったらしい。通話を切られたのか、かけなおしては「あァーン!!」と舌打ち、ベンチを蹴り上げていた。 さて。著者は、作家業の傍ら15年間、東
「広告は効かなくなった」「メディアは崩壊している」など、インターネットや携帯電話の普及とともに、私たちの情報環境はこの10年で大きく変化してきた。情報量は約500倍になり、どの情報を信じてよいのか分からないという事態になっている。 では、「これから情報を扱う世界はどんなふうに変わっていくのか」。最前線で活躍されている方々にそれぞれの立場で、話を聞いてきた。 最終回となる本編。マーケティングやコミュニケーションの「今まで」と「これから」を広告代理店として、大きなシェアを持つ電通の秋山隆平氏にお話を伺った。 情報量は10年で約500倍にもなった 藤田:これまで11人の「リアルな人々」から様々なお話を伺ってきましたが、インターネットの普及とともに、情報量の激増が話題に上がってきました。秋山さんは著作でもある『情報大爆発』(宣伝会議)の中で、この10年間で情報量が約500倍になったと書かれています
新年度が始まり、新しい環境や人間関係に身を置く機会が増えるこの時期。マネージャーとしての立場から「いかに人を育てるか」、あるいは異動や出会いをきっかけにいかに「自分が成長していくか」。あたらめてこの両方に深くかかわる「学び=学習」について考え直すタイミングでもある。 脳科学の立場から「本物の学び」とは何かについて、茂木健一郎氏に聞いた。他人を育てることと、自分を育てるための方法論は基本的に同じである。自発性、主体性をいかに担保するかが「学び」の根底にあると茂木氏は指摘する。(聞き手は日経ビジネスオンライン副編集長・渡辺和博) --学校教育や会社の研修制度など、「育てる」現場ではあるメソッドに沿ってカリキュラムを作成し、それに従って「学び」を促すという方法が取られがちですが、それは間違っているのでしょうか? 茂木:脳科学の観点からは「計画性」は「学び」から最も遠くに位置しているものです。ご質
日直のボウシータです。 パソコンで音楽のデータを管理・プレイするiTunesというソフトがある。iPodを使うためのソフトだ。 ソーシャルネットワーキングサイトmixiにある、「iTunes」のコミュニティで、iTunesの「マイレート」という項目をどういうふうに使っているか、という話題があった。マイレートというのは、ソフトで管理している曲を星ひとつから星5つまでの5段階で評価するものだ。 ある人はこんなことを書いていた。「好きな曲に5つ星を使うのはわかるけど、3つ星・2つ星というのはどういう意味づけにしたものか」。ちなみにその人は5つ星を〈最高、誰にでもおすすめできる〉としていた。5つ星については同様に〈誰もが思う名曲中の名曲〉という表現を使う人もいた。 これを読んで「うん、わかるわかる」という人は、ここから先は読まなくていい。あなたは文学を必要としていないからだ。 逆に、 「あれ? こ
経済学には「比較優位」という考え方がある。元来は自由貿易によってすべての国が恩恵を受ける理由を説明したものだ。経済学のノーベル賞と言われるアルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン銀行賞を受賞したポール・サミュエルソンは、比較優位について「経済学はこれ以上含蓄のある発見をほとんどしていない」とまで言っている。 この考え方はビジネスパーソンにもあてはまる。ほかの人と比べてすべての面で能力が劣っている人でも、分業で成り立つビジネスの上では「比較優位」を持ち、仕事に貢献できるというのだ。だからこそビジネスパーソンも常識として「比較優位」の考え方を理解しておきたい。 比較優位については経済学の入門書でよく扱われ、経済学の知識をビジネス的に解説するNHKの番組「出社が楽しい経済学」でも、またその解説書『出社が楽しい経済学)』でも、かなり易しく解説されている。しかしそれでも、ピンとこない人がいるかも
世界の新車需要が同時崩落した2008年、日本も1980年の規模まで市場が縮小した。このところの日本の持続的な需要減は、少子・高齢化の進展や、若年層のクルマ離れなど複合的な要因による。 このうち「クルマ離れ」については、若者の消費の多様化や、魅力的なクルマの不在といったことが指摘されてきた。だが、昨今の雇用情勢の悪化を見ると、実は「購買力」が大きな問題であることが浮き彫りになる。「クルマなんてとても手が届かない」という若者が増えているのだ。 2008年の国内新車需要は、前年を5%下回る508万台と1980年(502万台)以来のレベルになった。4年連続の減少であり、ピークだった90年(777万台)の3分の2まで縮小した。日本自動車工業会は、2009年の市場も5%減となる486万台と見込んでいる。500万台割れとなれば31年ぶりだ。 本質的な問題は「購買力」の低下か 金融危機に端を発する世界同時
気になる記事をスクラップできます。保存した記事は、マイページでスマホ、タブレットからでもご確認頂けます。※会員限定 無料会員登録 詳細 | ログイン いまひとつ、やる気が感じられない部下の仕事ぶりを見ながら、「どうしたら頑張ってくれるんだろう」と歯がゆく思っている上司の方も多いかもしれませんね。 日々生徒に接していると、子供たちのやる気のスイッチが入る瞬間に立ち会えることがあります。どんな時にスイッチが入るかというのは人それぞれだと思いますが、私が学校でしばしば目にしてきたものを3つ挙げてみます。 1) できないと思っていたことができた時 2) これはみんなのためになると思えた時 3) 自分のやりたいこと、目標ができた時 こんなきっかけがあると、見違えるほどぐんと伸びる子がいます。私にとっては、そうした彼女たちの姿を見る時こそが、スイッチの入る瞬間です。今回はこの3つについて、エピソードを
校正というと、誤字・脱字をチェックしたり、「てにをは」の修正をしたりといった作業を思い浮かべる人も多いのですが、これは間違いです。もちろん、こうした行為も校正の一つではありますが、もっと大切なことがいくつもあります。 原稿というのは、不思議なもので、書き上げたばかりのものよりも、寝かせて見直して、手直しを入れたもののほうが、はるかに出来がよくなります。「勢いで書き上げる第一稿、落ち着いて見直す第二稿」とか「ラブレターと原稿は一晩寝かせてから提出する」という言葉が、物書きの間では、よく出てきます。 もし、あなたが勢いで書き上げた第一稿を見直さず、クライアントに提出したり、Webサイト上に掲載したりしたらどうなるでしょうか? ほとんどの場合、誤字・脱字があったり、読みづらい文章があったり、間違いがあったりするでしょう。 原稿の品質向上のためには、見直す時間も考慮して、スケジュールを組み立てるこ
米国に端を発した金融危機、日々口にするような食べ物の汚染発覚など、いまや「不安」が常態となっている。 不安な時代が叫ばれるほど、その裏返しに「こうすれば確実に成功を得られますよ」といった、生き方やノウハウの話がもてはやされる。思えば、家庭や学校で教えられた「自分の頭で考え、決断できる人になりましょう」といったこともノウハウの1つでしかなかった。 ある程度の年齢を重ねれば、そんな法則が当てはまらない多くの例外を目にするが、むしろ例外の方が主流なのではと思えてくる。 世の中、思いどおりに行くことのほうが珍しい。努力して成功したが、健康を害した。財産を失ったが、愛する人と巡り会えた……。手に入れるとは失うことであり、その逆も真だと思えることが多い。すべてが偶然ならば、自分の意志で成し遂げられることは、そう多くはないのではないか。 そもそも人は、いつ死ぬかは分からない。だが、“老い”や“病”を得て
団塊世代からは異論もあるかもしれない。だが、思想家、吉本隆明(よしもと・たかあき)という名前に、特別の思い入れを感じない人のほうがもう多い時代、だろう。 しかし「よしもとばななって、吉本隆明の娘さんなんだよ、と言われても、それって誰? というような人が、今の僕にとって理想的な相手です」と、糸井重里氏は語る。 糸井氏が率いる「ほぼ日刊イトイ新聞」は、吉本隆明の講演集CDブック『吉本隆明の声と言葉。』を初め、数々のコンテンツを発売する。いま、彼の言葉を求めている人が多くいる、と糸井氏が確信している理由は何なのだろうか。 ――そもそも糸井さんが「吉本隆明」と初めて出会ったのはいつだったのでしょうか。 糸井 高校のときに読んだ『芸術的抵抗と挫折』だったと思います。といっても、当時の僕には分かりっこないですよね。高校生が田舎でぶらぶらしてるくせに、どこに芸術的抵抗があって、どこに挫折があるんだよ、と
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