「ところでさ、お姉さん、いま何色のパンツ履いてるの」 「ありがとうございます。申し訳ありませんが、お答えできかねます」 何に対しての「ありがとうございます」なんだろう。でも私の口は、私の頭が考えるよりも先に言葉を発してしまう。こんなセクハラのテンプレートのようなセリフも、20回も聞けば驚きも嫌悪感もなくなってしまうのだ。 「チッ。もうかけてくんなよ」 それだけ言われて、ガチャンと電話を叩きつけられた。こんな不機嫌な中年男性の対応に対しても、恐怖も苛立ちも何も感じない。あくびをしながら、私の指はもうすでに次の顧客の電話番号へとダイヤルしている。今日、パンツ何色だっけなあ、そんなことをぼんやりと考えながら。 「お世話になっております。株式会社〇〇の遠藤と申します。現在、プロバイダについてのアンケートを行っておりまして、〇〇様のご自宅でご利用中の回線は……」 この台詞も同じだ。流れるように口から