家事事件では、駆け引きは禁物である。特に強者が立場を利用して「弱い者いじめ」をするというのは、最悪である。「弱い者いじめ」をしたという印象を裁判所に与えたら、勝てる事件も勝てなくなるからだ。 この点を理解していない方が、とりわけ男性に多い。男性弁護士にも多い。家事事件をビジネスの観点から割り切り、取引の駆け引きを家事事件に持ち込もうとするのだ。 取引では、相手の弱点を突いて有利な交渉をするのは「弱い者いじめ」ではあるが、独禁法違反にでもならないかぎり、許される。どうやら、その発想で家事事件を処理しようとするのだ。 うちの事務所に来る相談者の中には、すでに別の弁護士さんと面談して、セカンドオピニオンを求めて来られる方もいる。その中で、あきれた弁護士のアドバイスを紹介しよう。 「要求を呑まなければ、婚姻費用の支払いを停止する。相手は、困窮して最後に折れてくるはずだ」 「面会交流と養育費の支払い