人類の歴史は「失敗の歴史」ともいえる。国を統治した王や、戦いの先陣に立った英雄のたった一つの判断ミスが、国や民族の命運を分けた例は数知れない。一方で、通常なら歴史に名を残すことのないような一個人の過ちが、その後の世界を大きく変えてしまうこともある。 ナショナル ジオグラフィックの書籍『失敗だらけの人類史』は、そのような歴史的な「失敗」の数々を取り上げ、何を間違ったのか、その結果どうなったのかを解説する本だ。ここでは、オーストラリアにウサギを持ち込み、その生態系をがらりと変えてしまった一人の男の物語を紹介しよう。 持ち込まれたウサギ 時は1859年、オーストラリアのビクトリア州でのこと。ビクトリア州順化協会に名を連ねるトーマス・オースティンは、ウィンチェルシーに所有する自らの土地で、クリスマスに狩りを行うことにした。本国イギリスの生活をうらやむ気持ちと、狩りをしたいという彼の願いが、やがて史