(本稿は「パラサイト 半地下の家族」の抽象的ネタバレを含みます。) 「パラサイト 半地下の家族」(ポン・ジュノ監督)はカンヌ国際映画賞やアカデミー賞を受賞した2019年の世界的大ヒット作である。 衝撃的な結末だと聞いていたので、半地下一家が上流一家を皆殺しにし、顔の皮を被ってなりすますのかと思って見ていたら、そこまで陰惨ではなかった。バッドエンドではあるのだが、ちゃんと悪者が悪事の報いを受けているので「鬼滅の刃劇場版」に比べれば不条理感は薄かった。芥川龍之介の「蜘蛛の糸」を連想した。 超貧乏だが仲良しの犯罪一家の造形が「万引き家族」と、金持ち一家と貧乏一家を対比的に描いている所が「そして父になる」と似ている。貧困層を可哀想な人として描かず、ちょっとやり過ぎであり、感情移入できないなあ、というレベルの悪事を働かせる所も似ている。 だが、「万引き家族」と比べると脚本が滅茶苦茶練りこまれている。