灘区を走る「坂バス」が気に入って、用もないのにこのバスに乗っている。 山があって、海があって、その間に坂道があって人々の暮らしがある。そんなぼんやりとしたイメージを「神戸らしさ」と呼んでもいいのなら、坂バスの窓から見える商店街の人々の行き交いや、途中下車して歩き眺める町の景色は、そんな「神戸らしさ」のイメージにくっきりと輪郭をあたえてくれるように思える。神戸といっても広いので、ここは「灘らしさ」と言ったほうが良いだろうか。JR灘駅の南口を降りてすぐ、青空を飛ぶ白いカモメが目印のバス停に立ち、20分に1度やってくるバスに乗る。210円を料金箱に入れて、座席に腰を沈める。発車まであと10分お待ちください。それもまたのんびりしていて良い。私はタブレットをかばんから出して、地図を見る。 神戸に旅行に来て1日ぽっかりと予定があいたなら、あるいは関西に住んでいて「今日はやる事がなくてひまだな…」という