→紀伊國屋書店で購入 「夢幻的人生」 書店で厚い本を見ると惹かれてしまう。本狂いの人間の悪い癖だ。厚い本だと楽しみが長く続くのが嬉しいのである。薄いと、会席料理の一部に時々現れるお寿司のように、食べてしまうのが(読んでしまうのが)もったいなく感じて、手を出すのが惜しくなってしまう。貧乏性だろうか? 町田康の『告白』は、文庫本だが800ページを超える長編である。だが楽しみはそれほど長くは続かなかった。面白くて一気に読まされてしまうのである。明治26年に実際に起きた「河内十人斬り」事件を元にした創作だ。主人公の城戸熊太郎は貧乏百姓の子だが、幼い時から何でも熟考する癖があり、しかもそれが哲学的妄想の域に達している。 子供同士の小競り合いでも、深く考え込む。弱い自分が強く見えるのは、大楠公流の奇知・奇略によってである。何故そうするのか。忠ではない。人を殴るのが気持ちよいのか、違う。では義だろうか・