古都・京都にある、職人や芸術家たちが集う長屋を舞台に、恋模様を描いたオムニバス作品である。 綴じ本職人、キャンドル作家、オーダー花屋、万華鏡作家、靴屋……と、長屋の住人はそれぞれこだわりをもって何かを作り、それを売って暮らしている人々だ。 作者はこれまで白泉社の少女マンガで活躍してきた麻生みこと。青年誌『good!アフタヌーン』での連載である本作でも、描きようによってはかなりドロッとした感じになりかねない題材も多いのに、持ち味の端正でありながら軽く上品な描線で、さらりと読める仕上がりになっているのだ。 たとえば才能をもちながらのほほんと欲のない画家・巽篤郎を学生時代からサポートしてきた雛子が、彼を飛躍させるために姿を消す話(1巻第3話)。挫折して東京から逃げてきた小説家・伊沢と、周囲になじめず伊沢になつくロリータファッションの少女・ナオミの恋(1巻第4話、2巻第7話)。ひきこもってなまめか