「中村憲剛がメンバーリストにいない」。そう思ったサポーターも多いのではないだろうか? 今年の春から初夏にかけて、リーグ戦では第7節から第17節の間、1試合を除いて計9試合でベンチ入りしていない。この期間いったい何が起こっていたのか――。それはプロ人生初ともいえるケガの連続だった。思い通りにならない身体、試合に出られない日々。川崎Fを長年取材するライタ―・原田大輔氏が人間・中村憲剛に深く切り込んだインタビュー。前編では「外」に見せなかった苦悩に迫る。 試合終了の笛が鳴ったとき、川崎フロンターレの中村憲剛は、こう感じていた。 「生きている」 2019年7月14日、3-0で勝利したFC東京との多摩川クラシコでのことだった。中村は、試合に勝利した以上に、自分が生きている意味を実感していた。それは自分を突き動かす力の源であり、活力とでも言えばいいだろうか。 「試合に勝利して、チームメイトのみんなとハ