書評に関するshoraishaのブックマーク (7)

  • 油断のならない語り手「庭、灰」

    実験的な色彩が強く、読み流すと「破綻した物語」に見える――のだが… ただの回想録と思いきや、語りの技巧にヤられる。最初は、少年時代の思い出を、時間の流れに沿って描いてゆく。死の恐怖、夢と死、母への思慕、父の紫煙、ユリアとの初恋…読み手は、自分の幼い頃と重ねながら甘酸っぱさを共有するかもしれない。 次にそれをベースにして、謎めいた存在だった「父」の探求を始める。いずれも「いま」「この場所」で「読み手に向かって」、「僕」が語る形式をとっているのだが、それぞれの要素がよじれてくる。ここから、まるで別物に見えてくる。 記憶よりも連想に寄りかかり、筋は論理矛盾を起こし、話者は「不確かな語り手」と化す。展開は絶えず断ち切られ、それらをつなぐ相関は、五感――視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚によって、身体的な表現へ触発される。モンタージュ、フラッシュバック、フェイドアウトなどの映画手法が応用され、視覚効果が強

    油断のならない語り手「庭、灰」
  • 今週の本棚:沼野充義・評 『砂時計』=ダニロ・キシュ著 - 毎日jp(毎日新聞)

    (松籟社・2100円) ◇不条理な死に打ち克つ文学の力 ダニロ・キシュ(一九三五-八九)は、旧ユーゴスラヴィア出身のユダヤ系作家である。これまでにも二冊、『若き日の哀しみ』と『死者の百科事典』が山崎佳代子さんのみずみずしい訳文によって日に紹介されていて(どちらも東京創元社刊)、すでに知る人ぞ知る存在になっているはずだが、今回新たに訳出された長編小説『砂時計』は、キシュを多少なりとも知っている読者を驚かせ、当惑させるような強烈なビジョンと、たくましい小説的構築の技を示す作品になっている。 『若き日の哀しみ』が「抒情のひと跳び」で少年時代にさかのぼって、淡い水彩画のような美しい光景を描き出していたとすれば、『死者の百科事典』はロマネスクの香りの強い幻想短編集だった。それに対して、『砂時計』はもっと重苦しく、出口がいつまでたっても見えてこないカフカ的悪夢の世界に読者をさまよわせる。 小説の冒頭

  •  ダニロ・キシュ『砂時計』読了 - 西東京日記 IN はてな

    かなり読む人を選ぶ小説かもしれませんが、これは面白い! 帯に書かれた若島正の紹介文はこんな感じ。 『砂時計』には、現実に書かれた一通の手紙が取り込まれている。その手紙の中に封印された、歴史的事実の重みを前にして、わたしたち読者は打ちひしがれるが、それと同時に、そのまわりに複雑な虚構の迷宮を築かずにはいられなかった、作者ダニロ・キシュの不屈の精神にも圧倒されるのだ。 を読む前にこの紹介文を読んでも全然ピンと来ないかもしれないけど、読み終えた今はこの紹介文が当に的確だと思う。 アウシュビッツで命を落としたというユダヤ人で作者ダニロ・キシュの父親エドゥアルド。 この『砂時計』はこのエドゥアルド(作中ではE・Sと表記される)の人生の一部が、複雑かつ巧妙な構成によって語られます。 影の揺らめき。それは燃え上がったと思えば消え入りそうになりしぼんでいくぎざぎざの炎のままに、天井と壁を近づけたり遠ざ

     ダニロ・キシュ『砂時計』読了 - 西東京日記 IN はてな
  • ネグリ『構成的権力』書評集 斉藤悦則のページ

    アントニオ・ネグリ 『構成的権力』 松籟社、1999年6月15日、510ページ、4800円 ぼくは全7章のうち3~5章を担当。

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  • ヨセフ・シュクヴォレツキー『二つの伝説』 - 書物を積む者はやがて人生を積むだろう

    二つの伝説 (東欧の想像力) 作者: ヨゼフシュクヴォレツキー,Josef Skvoreck´y,石川達夫,平野清美出版社/メーカー: 松籟社発売日: 2010/11/10メディア: 単行 クリック: 16回この商品を含むブログ (5件) を見る ナチとその後の共産主義政権下でのジャズについて書かれたエッセイ「レッド・ミュージック」と、「エメケの伝説」「バスサクソフォン」の二つの中篇を収録した。 「エメケの伝説」は、小さな村のレクリエーションセンターでの、ハンガリー出身の神秘的な未亡人エメケと語り手の愛と、粗野な中年教師の横槍によりそれが挫かれてしまう顛末を描いた作品。エメケより何より教師の下品な言動の描き方がなんとも残酷で、最後の教師への復讐の場面もかなり陰険、というか、いじめだろ、これ。こういうキャラでもって小説を展開させるのは正直好きじゃない。 「バスサクソフォン」は、ナチ支配下

    ヨセフ・シュクヴォレツキー『二つの伝説』 - 書物を積む者はやがて人生を積むだろう
  • 【レビュー・書評】評伝オーロビンド [著]ピーター・ヒース - 書評 - BOOK:asahi.com(朝日新聞社)

    評伝オーロビンド [著]ピーター・ヒース[評者]中島岳志(北海道大学准教授・アジア政治)[掲載]2011年2月27日著者:ピーター ヒース  出版社:インスクリプト 価格:¥ 3,150 ■近代の突破、普遍宗教に求める 20世紀初頭、インドの独立運動は大きな転機を迎えた。イギリスとの対話を重視した知識人に対し、即時の完全独立を要求する急進的なグループが現れた。彼らは大衆運動を重視し、時に過激な武装闘争を展開した。 この運動を牽引(けんいん)した代表的指導者がオーロビンドである。彼の知名度は日では低いが、インドではガンディーやネルーと並ぶ英雄だ。ノーベル賞候補にも挙げられたことがある。 オーロビンドは政治闘争に加わると同時に、ヨーガの実践にも力を入れた。彼はヒンドゥー教の「ダルマ」(法・真理)の普遍性を強調し、その理念を生活の中で実践すべきことを説いた。 オーロビンドにとって、政治と宗教は

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