米『ローリング・ストーン』誌などに執筆していた音楽評論家、レスター・バングスは、77年当時に「僕らはエルヴィスについて同感していたような具合に何かに同感するということは二度とないだろう」と発言している。それを受け、同じく音楽評論家のグリール・マーカスは「その通りだ」とした上で、「ロックの聴き手はますます分離してしまい、種々雑多な聴き手が互いを無視しあっている」と述べた。これが80年のことだ。驚くことにこうした見識は34年後の今なお散見され、所謂タコツボ化していることの危機感のようなものが延々増幅されながら語られ続ける結果となっている。 だが、果たしてそれは本当に危機的な状況なのだろうか、と思うのだ。タコツボ化してバラバラになっているならちょうどいいじゃないか。そもそも、世界中のあちこちには何の遮断もなく魅力的な音楽がたくさん転がっている。その新旧バラバラな音楽を自在にピックアップして同一線
![タコツボ化時代に生まれた奇跡の生命体――くるり新作の音楽的背景を岡村詩野が分析](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/d66e2f1227ef2b99c2250463e0382544df2ca7c2/height=288;version=1;width=512/https%3A%2F%2Frealsound.jp%2Fwp-content%2Fuploads%2F2017%2F05%2F140916_kururi_j.jpg)