あなたは物語に人生を変えられた経験があるだろうか。小説でも、漫画でも、映画でも――あるいは、演劇でも何でもいい、ふとふれてみた何かの物語に、心奪われ、魂を鷲掴みにされ、夢中になって追いかけ、そして深く感動してなみだした、そういう経験があるだろうか。 もしあるのだとしたら、あなたは既に「こちら側」の人間であるに違いない。現実よりも美しい虚構があることをしり、事実よりも貴重な物語があることを体感した、夢と現実とを分かつ線の「こちら側」の住人。 あなたはべつだん、幸福ではないかもしれない。いったんふしぎなエーテルがみちみちた〈真世界〉の大気を吸ってしまった以上、あなたはこの現実世界に失望を感じていてもおかしくない。そう、あなたが幸福であるとはだれにもいえない。 しかし、それでもなお、あなたは幸福以上の価値をしっているはずだ。わたしはそれを〈真実〉であるといいたい。この世の法則を超えた、「そうある
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