ニセ札つかいの手記 - 武田泰淳異色短篇集 (中公文庫) 作者: 武田泰淳出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 2012/08/23メディア: 文庫 クリック: 4回この商品を含むブログ (7件) を見る 本書は、昭和24年〜38年の間に発表された短編集です。”異色”と銘打たれているだけあって、確かに不思議な読み味の作品ばかりが集められています。 めがね 相手の本当の姿を見るためには眼鏡を掛けねばなりませんが、そうすることで自分自身は素顔ではなくなる、つまりは本当の姿ではなくなります。「眼鏡」というアイテムを通じて語られる男女の微妙な関係。さらには、眼鏡がとても高価な時代が舞台なだけに、それは儚くて脆い世界観の象徴でもあります。見えるは見えない、見えないは見える。眼鏡を掛けることで見えるものもあれば、掛けないことで見えるものもあります。本作は丁寧語による文体も特徴的ですが、皮膜に包まれ