天明五年乙巳正月朔より四月のすゑまで、出羽の国おかちの郡のあらまし、小野小町のふる跡をたづねしを記したり。 胆氐波(出羽)のくに於雄勝の郡、飽田(秋田)のあがたにて年を越り。 天明五年正月朔、はつ日きらびやかにさしのぼる光に、雪の山々にほやかにみやられて、軒端とびかふ、むらすゞめさへづる声も、けふはわきて長閑なるおもひして、とに、いやたかうつもりたる雪を見つつ、 あさ日影匂へるまゝにふりつみし雪はみながら霞む俤 家ごとにさし入りて、ことぶきめでたしといふめる人の、こと葉ほこりかにしはぶきありく。 鴨柄はしらなどにかけたるいなほ、あはほのもちゐ、又おかのもちといふは、うがのみたま(稲倉魂)のもちゐならん歟.なりひさごのごとく、中くぼかにたいらかなるを、家にすむ男の数にあわして神に奉る。 かゞみもちは例のことながら、栗、柿、干蕨、鯡、昆布、五葉の枝そえて、遠つおや祭るとて、かゝるいをのなまぐさ